「以前のコラムで“マーケットイン”よりも“プロダクトアウト”で事業を推進すべき…と書かれていましたが、藤冨さんのコラムは常に顧客視点ですよね? どう解釈すれば良いのでしょうか?」
確かに誤解を受けやすいテーマなので、今日は少し掘り下げてみたいと思います。
マーケットインの定義をどう捉えるかによって、解釈は異なります。
買い手の立場に立って、必要なものを提供するという視点であれば、マーケットインで商品開発や事業開発をするのは正しいことです。
商売が成り立つ起点は「顧客」だから当然です。
しかし、「ニーズを聞いて商品を開発すること」という視野の狭い視点でマーケットインを定義するならば、小成功はあっても大成功はありません。
いえ、中長期的に捉えると小成功ですらないかも知れません。
ニーズを聞いて商品やサービスを作り込む「迎合体質」は、経営の軸がブレやすくなるからです。
なぜ、ニーズを聞いてはいけないのか。
本コラムでも何度か取り上げていますが、聞けるニーズは、「すでにあるもの(顕在ニーズ)」なので、すでに陳腐化が始まっているからです。
もちろん、世にない切り口や尖った発想を持つ顧客が放つ少数派意見であれば、そこにはビジネスチャンスが眠っているかも知れません。
でも、アンケートを集計してニーズを掴み取るアプローチは、間違いなく陳腐化が始まっています。
顧客の意見やニーズは、時代の影響、テクノロジーの変化、生活・価値観の変化などから、常に変化しています。
すでに起こっている変化は、すでに過去のものになりつつある。
つまり陳腐化が始まっているわけです。
ましてや、すでに競合商品の存在があれば、二番煎じとなり、単なるモノマネでしかなくなります。
大量の資本投下や超速行動でガツンと先駆者を潰さない限り、弱い競争力と低い利益率に甘んじざるを得ません。
これが、「ニーズを聞いて商品を開発すること」という視野の狭い視点でのマーケットインの問題点です。
では、プロダクトアウトはどうでしょう。
一般的には、会社の技術力や経験値を背景にして、作りたいものを売りたい先に向けて事業を進めていくという認識だと思います。
顧客を見ずに、自己満足の世界観を市場や顧客に押し付ける。
そんなイメージを抱けば、確かにこれは間違いだと言わざるを得ません。
商売が成り立つ起点は「顧客」だから当然です。
ただ、顧客が“まだ気づいていない本当に求めているもの”を作り出す「プロダクトアウト」であれば話は別です。
アップルのiPhoneや、シャープの作ったカメラ付き携帯電話の「写メ」などは、プロダクトアウトです。
また、前回のコラムで取り上げた履き続けることで、足の本来的機能を取り戻す「BMZ社のインソール」もプロダクトアウト型の商品です。
▼BMZ▼
顧客は、自分の問題点や獲得できるであろう満足に気がついておらず、企業から提案されて「それ、便利かも!」と気づいた瞬間に売上が爆発するのです。
なぜか?
これは商品が普及していくプロセスを観察すると理解できます。
新しいものは「話題性」になりやすく、かつ「話題」が「期待」へと遷移(せんい)し、「期待」と同等、それ以上の効果を実感できれば、「口コミ」が始まります。
すると「メディア」もニュースとして取り上げ始めるから、さらに購買の連鎖が始まる。結果として、売上が爆発するわけです。
これは、商品開発のレイヤーだけでなく、営業活動のレイヤーでも同じことが起きます。
冷蔵庫は、一般的に食品等を「冷やす」目的で購入されています。
モノが腐らないようにするために、顧客はその「冷やす」という機能を購入しています。
でも、これは外気が暖かいということが前提になります。
−40度の世界では、モノが腐りませんから「冷やす」機能は必要ありません。
エスキモーに冷蔵庫を売ったセールスマンは、「冷やす」ではなく「凍結防止庫」として販売を成功させました。
これも、立派なプロダクトアウト思考です。
爆発的に売れるプロダクトアウト思考は、
「今、起きていること」
「今、人々が置かれている環境」
を、観察力と洞察力を研ぎ澄ませて「必要なもの」を生み出す思考プロセスを辿った時に実現されます。
決して人々の口からは「必要なもの」が発想されるのではありません。
観察、洞察、思考する中で、自社の持つ技術、経験、製品機能が活かせる時に「必要なもの」が生まれてくるのです。
御社でも、爆発的に売れる「プロダクトアウト思考」に没頭してみませんか?
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