「大のオトナが何時間も雁首そろえて“売れる言葉”とやらを考える時間が、とても無駄に感じていました。でも、今その意味がようやく分かりました」
先日、プロジェクトをご一緒した社長から告げられた一言。
6ヶ月ほど前に売り出した商品が、順調に滑り出し、着実に右肩上がりの様子を見せている報告を受けたのですが、コンサルティングの最中は正直言って何をやっているのか、理解できなかったとのことでした。
確かに“売れる言葉”を作ることが目的なら、コピーライターに頼めばいいことのように感じるかも知れません。
でも、私は“売れる言葉”を作ることだけが目的で、貴重な時間を費やしていたわけではありません。
売れる思考法をプロジェクトにインストールすること。
これが、真の目的だったので、一見無駄に感じる時間をクソ真面目に取り組んでいたのです。
私が20代の頃にのめり込むようにして愛読していた藤田田氏(日本マクドナルドの創業者)の書籍の中に「起業戦争の極意」という本があります。
その中に「コカコーラの売上を2倍にする方法」が書かれていました。
切り口は2つ。
1つは、習慣の中に、親和させること。
2つ目は、親和させるために「つなぎ」を発見すること。
この2点です。
生活習慣の中に、親和をさせるには、コカコーラを神棚に供えさせるように、まずはカタチ(容器)を変える必要があると、言い切っている。
しかも、私なら絶対そうすると。
かなり突き抜けた発想に感じるかも知れません。
が、藤田田氏の言いたいことは、そこまで日本人の生活習慣に溶け込ませろ!と言っているに過ぎません。
当時、コーラよりも売れていた「ジョージアコーヒー」を例に出し、こう言っています。
世界の常識は「コーヒーは熱いもの」。
しかし、戦前の大阪では「冷コー(れいこー)」と言って、冷たいコーヒーが飲まれていた。
そこに、コカコーラ社が目をつけ、ジョージアを開発し、大ヒットさせたそう。
コカコーラは、戦後、アメリカの飲み物として、上陸したものなので、コカコーラを飲むという文化がありませんでした。
同書が書かれた1991年以前、コカコーラの売上が頭打ちになっていることを、当時の社長から聞いた藤田田氏は、「私なら売上を2倍にするアイディアがある」と、生活習慣や文化に浸透させる必要性があることを指摘したわけです。
実際、神棚に供える容器開発が、売上2倍の引き金にはならないでしょうが、
「そこまで生活習慣に溶け込むアイディアを考えろ!」というのが真意だと捉えれば、実現しそうなアイディアは他にも色々と考え出すことができる筈です。
2点目の「親和させる“つなぎ”を発見する」という視点は、「売れそうなアイディア(発想)を、事業活動(行動)に変える」ための重要な視点になります。
書の中では、「もう一つ、売れるアイディアがある。天ぷらコークを作ればいいのだ!」と、これまた極端な表現で言っていました。
天ぷらは、脂っこい。
だから、さっぱりとさせるコーラは、天ぷらにぴったり合う。
異質な文化には入ろうとすると、反発にあいやすい。
しかし、すでに定着した文化とドッキングさせれば、スムーズに浸透する可能性が高くなるという理屈です。
売り手が提案する新商品が、これまでの習慣を変えたり、捨てることなく、新しい価値が受け取れることは、売上を高位安定化させるためには、とても大事な視点です。
前々回のコラムで「第273話 表面だけ真似をしても上手くいかない理由」に書いた「新しい価値が市民権を得ていくために必要な5つの要因」の中にある両立性という視点が、まさにこれです。
→ https://www.j-ioc.com/wp2024/column/4858/
売上が確実に上がる方法というものは、存在しません。
しかし、売上を上げるための押さえておかなければいけないポイントは、確実に存在します。
そんなことを意識しなくても、売れた商品は、たまたま押さえるべきポイントを押さえていたに過ぎません。
ならば、意図して売上を上げるためには、押さえるべきポイントは確実に押さえておきたいものです。
「売れる言葉」の開発は、まさに、この押さえるべきポイントの最重要テーマです。
なぜなら、売れる言葉を開発するには、まず相手がよく使う言葉を知る必要があるからです。
見込み客が普段使わない言葉を使っても、反応してくれません。
だから見込み客に馴染みのある言葉で、気づきを得る必要があるのです。
馴染みのある言葉を知るためには、相手の習慣や思考回路を知らなければなりません。
売れる言葉の開発は、表面的な話ではないのです。
組織のメンバーが、相手を知り、己をよく知って仕事をすれば、成果が出やすくなるのは、異論がない筈です。
でも、相手を知り、己を知るというのは、抽象的すぎて具体的にどうアプローチをすれば良いのか分からない。
だから、プロジェクトを通じて、「相手を知り、己を知る」という具体的な取り組み方を実務活動として、共有したいのです。
御社では、売上につながりやすい「仕事の取り組み方」を組織に定着させていますでしょうか?