「この6ヶ月で営業マンが3人立て続けに退職しました。 補充人員を採用しようと募集しているのですが、どうにも人が集まらなくて… 良い募集方法はないでしょうか」
先日、受けたご相談ですが、ご質問の内容に答える前に、どうしても気になることがあったので、逆に質問をさせていただきました。
「なぜ、3人も立て続けに辞めたのですかね?」と。
すると「建前上は、田舎に帰るとか、他の業界を見てみたい、という理由でした。でも本当のところはわからないですね」
とおっしゃるので、彼らの働きについて、さらにご質問すると、問題の本質にアプローチできる事実が浮かび上がってきました。
全員、この1〜2年成績が悪化してきていたとのこと。
ひどい営業マンは、1年前の半分以下だそう。
しかし、会社自体の売上は上がっている。
売れていない営業マンのリード(受注のキッカケになった活動)は、テレアポや飛び込み。
売れている営業マンのリードは、「ホームページからの問い合わせ」や「紹介」が中心だと言うのです。
つまり、確実に受注を決めてくれそうな成績上位の営業マンに「問い合わせ」などの有望な見込み客を渡し、成績不良の営業マンには、餌を与えず、自ら探せ!というスタイルを取ってきたそうです。
一見すると不公平に感じるものの、これはある意味仕方のないこと。
なぜなら、会社が、ホームページに投資をして、見込み客化したのですから、投資回収…つまり確実に受注に繋げたいのはある意味当然です。
でも、見込み客を振ってくれない営業マンからすれば、不公平に感じるのも、これまた現実。
なので、本来であれば、「会社が投資して見込み客化した営業先は、受注率の高い営業マンに引き継ぐ」など、基準をしっかりと説明すれば良かったものの、それがなかったわけです。
経営者や営業マネージャーに好き嫌いの感情はないものの、不公平感を抱いた営業マンは、「私は嫌われている…」「私は無能扱いされている」と解釈を曲げてしまいがち。
人間が生きる上で強い原動力となりがちな「自己承認欲求」が満たされないのですから、拗ねて辞めるのはある意味必然だったわけです。
だからこそ「問い合わせ客を引き渡す基準」を明確にして、無駄に自尊心を傷つけない対策が必要だったのですが…
すでに退職してしまった現実は変わりませんから、今更言っても後の祭りです。
3人が辞めた売上減の補填対策をどうすべきか? 未来に目を向ける方が、よほど健全です。
しかし、結論から言えば、辞めた人数分の営業マンを補充しても、問題は全く解決されないと強く感じました。
と言うのも、辞めた3人の成績内訳は、既存客からの追加受注が100%とのこと。
追加受注にも、実は“性質”があって、他社へスイッチングが困難で、消極的な購買行動と、他社へのスイッチングが可能で、積極的な購買行動が存在しています。
ここに意識がいっていないとトンチンカンなリクルートに繋がってしまいます。
他社へのスイッチングが困難で消極的な購買行動とは、他の商品を入れると操作の仕方が変わったり、お客様から見た時の印象が変わったりして、社内外に混乱を招く性質を持った商品です。
他に良いな!と思う商品が見つかっても、なかなか浮気できない。
仕方なく購入している商品というのが存在しています。
反対に、他社製品に浮気しても混乱を招かないスイッチングが容易な商品は、営業マンが好き、会社の雰囲気が好き、ブランドが好きなど、積極的な購買行動が伴わなければ、売れない商品が存在します。
これは、営業マンの力量が必要になってくるので、追加受注といえども、そこそこの営業スキルが求められる活動が必要となります。
つまり営業マンの質が売上を左右するわけです。
しかし、前者の消極的購買行動の商品は、事務レベルのスキルでも受注できるわけです。
であれば、募集が難しい営業マンに採用コストをかけるよりは、営業事務で募集をして、担当させる方が、明らかに人は集まりやすいし、定着率もよくなるはずです。
すでに辞めた3人の引き継ぎ顧客は、現営業マンが担当しているとのことだったので、全ての追加受注体制を新規の営業事務主体で動かし、手の空いた営業マンは、全て新規受注に振り分けることで、さらなる売上アップを目指す。
2名分の人件費予算があるのですから、現在の見込み客発掘リードの主力である「ホームページ」に追加投資をし、有望な見込客を集客に充てる。
ホームページのアクセス解析を見れば「まだまだ集客の潜在力がある」ことは、一発でわかったので、そうご助言したところ、同社の社長はあっさり3名の営業マン採用を中止。
代わりに、1〜2名の営業事務の増員とホームページの集客強化を即実施しよう!との方針を新たにされていました。
現状そして問題の本質を見極めないと、解決したい問題も解決されずフラストレーションが溜まるばかりです。
今回も、単に欠員した営業マンを補充するだけだったら、また1年後、2年後に同じ問題が起きたかもしれません。
これは、人の問題に限ったことではありません。
「今何が起きているのか?」
「問題の本質は何か?」
表面的な現象に翻弄されず、本質を追求することで、経営が求める成果を拒む問題が解決されていきます。
御社では、「今何が起きているのか?」「問題の本質は何か?」を正しく掌握されていますでしょうか?