「競合商品の価格が安すぎて対抗できません…最近営業マンが口癖のように売れない理由を説明してきます。どう対応すべきだと思いますか?」
自社商品がコモディティ化してくると必ず出くわす問題が熾烈な価格競争の問題です。
最近、複数社から耳にしているテーマなので、改めて問題解決アプローチを整理してみたいと思います。
まず、大前提として、いかに現状を正しく捉えるかが重要になります。
そのためには、経営陣と営業部隊が感情論ではなく、論理的にどう対処すべきか…冷静になって話し合うことが大事です。
もっともマズイのは、「なんとかなるでしょ」と問題を放置すること。
政治家は、問題を放置しても「なかったこと」にできますが、経済人は「なかったこと」にはできません。
企業●年寿命説は、「ビジネスモデルの変化に対応ができないこと」が主因であると言われる通り、問題を根本から解決することなしに企業は生存競争に生き残れません。
これは、逃れられない現実なのではないでしょうか。
価格競争で負けている。
これは、ビジネスモデルが大きな壁にぶち当たっている前兆でもあります。
放っておいたり、根性論で突破しない方が賢明だと、最近常々感じています。
価格競争を回避するには、大きく分けて5つのアプローチがあります。
①. 競合に勝つ「価格改定」を行う。
②. 付加価値を明確にして「勝てる営業」を共有する。
③. 新市場を開拓する。
④. 撤退して新商品開発を行う。
これら4つは、教科書にも載っているアプローチですが、もう1つだけ有効な策があります。
それは、
⑤. 価格で選択させない「世界観」を創造する…ことです。
一つずつ、見ていきましょう。
①. の価格改定は、もっともシンプルな問題解決法になります。
究極にコモディティ化した商品分野は、差別化も尽くされ、さらなる差別化は雑音にしかならないこともあります。
こういった分野は、致し方なく「値下げ」することも選択肢になるでしょう。
ただし、安易な値下げは顧客に見透かされ、逆に売上不振に陥るケースも多々見られるので、注意が必要です。
必ず「値下げする理由づけ」を営業マン、顧客が共有しておいてください。
また、単なる値下げは企業生命の源泉である「粗利益」を削ることになります。
なので、同時に、抱き合わせ販売やバックエンド商品を設計して「受注1件あたりの粗利益額を維持する策」も大事です。
②. 付加価値を明確にして「勝てる営業」を共有する。
性能、機能の差別化は、付加価値ではありません。
あくまでも、顧客にとってのメリットとして差別化された性能、機能が付加価値となります。
顧客は、「なぜ、この商品を買わなければならないのか?」を認知しないと、購買行動は起こしません。
「買う理由づけ」が必要なのです。
ここを明確にできるのであれば、1点突破。
セリングポイントをこの付加価値だけに絞って、市場とコミュニケーション。営業マンと顧客のコミュニケーションを徹底させることで競争力の維持に繋がります。
③. 新市場を開拓する。
既存市場が「価格競争」で荒らされた場合、競合他社が目をつけていない新しい市場を開拓することも、有効な策です。
既存商品が、他の市場の、他の顧客メリットに貢献できないか…
クリエティブ力を発揮して「新市場」を見つけ出し、的確なセールス・コミュニケーションを駆使すれば、これまでとは違う「儲け」を創造することもできます。
「第260話 儲けに繋げる「営業的思考プロセス」のあり方」で取り上げた事例は、この最たる問題解決アプローチ。
飲食店によく使われている呼び出しベルを、工場用に転用させた事例を紹介していますので、お時間のあるときに再読してみてください。
④. 新商品を開発する。
荒らされた市場に見切りをつけて、新しい出発をすることも時には必要です。
撤退戦略は、一見すると逃げのように見えるかも知れません。
しかし、「強み」を発揮できないビジネスは、低収益に甘んじる他ないのが現実。
IBMがパソコン事業を潔く撤退し、強みの活かせる事業分野に集中していること。
100年以上続く長寿企業は、したたかにビジネスモデルを転換している企業が多いこと。
これらの現実を踏まえると「勝ち続ける企業」であるためには、避けては通れない道なのかも知れません。
そして、最後の⑤. 価格で選択させない「世界観」を創造する…こと。
これは、ものすごく分かり易く言うと「宗教」を作る考え方を取り入れるのです。
時代を超えて生き残る企業を分析した書籍「ビジョナリーカンパニー」の中でも、
ビジョナリーカンパニーであり続ける条件の一つに「カルト集団のような文化が作られている」ことが、ビジョナリーカンパニーを分析する中で発見されたと発表されています。
社員に働きやすい環境を作るのではなく、理念への熱狂、教化への努力、同質性への追求…を行い、仲間になれるのかなれないのかをはっきりさせる。
このカルト(新興宗教)のような文化が育まれている企業が、時代を超えて生き残っていると言うのです。
これは、会社と社員の関係を超えて、顧客との関係の中にも浸透していくはず。
なので、意図して「顧客との関係づくりで、この“理念への熱狂、教化への努力、同質性への追求”を行うことで、独自の文化を育む」ことに神経を注いでみる。
すると、競争に陥らない環境を作ることができるわけです。
そもそも、価格競争に陥る本質的な原因は、「比較・選択」されることです。
この「比較・選択」の前に、強い意思決定要素があれば、自社の商品を購入してくれる確率がグンと上がる。
社員、顧客を巻き込んで「カルトのような文化」を作る。
価格競争に陥らない非常に有効な策と言えるでしょう。
①から⑤まで、どの策が最も自社に有効か?
市場環境、社員の質、経営者のタイプによって、それぞれ違います。
企業の存続につながる重要な意思決定なので、経営者と前線で戦う営業マン、または企画や製造など現場の人たちと膝を突き合わせて、論理的に協議することが重要です。
御社では、価格競争にさらされた時、問題を放置し、全員傍観者のように立ち振る舞ってはいませんか?