「営業は、頭脳戦なのですね…」
先日ミーティングをした経営幹部が、ボソッとつぶやいた一言。
愚直な営業努力をする姿勢がヒシヒシと伝わるものの、現在の成果に対しては、納得の行かないご様子。
さらなる飛躍を目指して、何をすべきか?
ディスカッションの場に参画させてもらいました。
同社を取り巻く環境は、超がつくほどの成熟市場。
商品の差別化も難しく、消費者の期待値も高くない分野で商売をされています。
そもそも、セールスは「期待値」で購買意欲を喚起し、「使用感」でリピートや紹介商談を生み出すもの。
ミネラルウォーター、スーパーに並ぶような生鮮食品など、どれを選んでも一緒かな…と消費者が認知している商品分野は、極めて「選択購買」の仕掛けづくりが難しいものになります。
セールスの現場において「この商品は素晴らしいかも!」「この商品を買ったら、楽しそうだ!」「この商品を買ったら、こんなメリットが得られるかも!」と言う「期待値」こそが、選択購買…つまり当社の商品を選んでもらうための動機づけになります。
この「期待値」の魅力づくりこそが、セールスにおける最初の出発点となります。
何度も、本コラムで取り上げていますが、セールスの基本はAIDMAを意識することです。
※AIDMA
商品を認知し、購買に至るまでの心理プロセス。
Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)の
段階を経て、購入に至る。
AIDMAは、ロジカルに数字を上げていく「営業企画」をする上で、絶対に無視をしてはいけない消費者の購買プロセスです。
営業や販売は、心理学であり、工程管理に倣って捉えることで持続的な成果を生み出すことが出来ます。
見込客は、何に興味を抱くのか?
見込客は、どこで購買意欲を失ったのか?
購買の意思決定プロセスを「工程管理(管理工学)」に見立てて、「心理学」で読み解くことが大切だと藤冨は数多のコンサルティングを通じて痛感しています。
概念では分かりにくいので、具体的に見ていきましょう。
- 如何に注意を引きつけるか…(Attention)
私たちは、1日にとてつもない数の広告宣伝やセールス活動に触れています。
一般論ではありますが、人間が1日に接触する広告宣伝の数は、2000〜3000になると言われています。
テレビCM、ラジオCM、看板、チラシ、店頭POP、DM、電話セールス…
ありとあらゆる宣伝が視覚・聴覚を通じて入ってきていますが、ほとんどはスルーしているはず。
だからこそ、如何に「注意(Attention)」を引きつけるか?に、神経を研ぎ澄ませることが大切です。
- 如何に関心を持ってもらえるか…(Interest)
注意を引きつけた後は、如何に「興味」を持ってもらうか?が次なる課題。
そのためには、「注意」と「興味」を橋渡しする心理プロセス…「関心」に着目する必要があります。
注意は、デザインであったり、キャッチコピーであったりしますが、この関心のステージを藤冨は「スリップ・メッセージ」と呼んでいます。
如何に話を聞く体制を作るか。如何にカタログやチラシを読もうと思ってもらえるか。 如何に当社商品のことをもっと知ろうと思ってもらえるか?
消費者目線に立って、購買心理を読み解くことがポイントとなります。
- 如何に興味を持ってもらえるか…(Desire)
関心を持って、話を聞いてくれたり、説明を読んでくれた後に、訪れる次なる購買心理は「私にとって、どんなメリットがあるか?」です。
一般論ではなく、私にとって…が最大のポイントです。
よく、お客様の声とか事例集を作ることがセールスには重要と言われますが、まさに、この興味のステージで「私にとって…」を気づいてもらう格好なツールが利用者の声だからです。
一つの切り口ではなく、様々な購買動機を顕在化することで、取りこぼしのないセールスの仕掛づくりができるようになります。
- 見込客の「記憶(Memory)」の中で、如何に、自社の優位性を感じてもらうか…
私にとってメリットのある商品だと気づいてもらえても、すぐには購買行動には移りません。
もっと、よりよくメリットを享受できる商品はなかったか? 見込客は自分の記憶を辿りながら、この商品以外の選択肢を想像し始めます。
この時に、如何に自社の差別化されたポイントを認識してもらえるか?が重要になります。
また、不安要素の解消も、記憶のステージでは大事なセールス活動になります。この商品を買うリスクやデメリットをぼんやり意識するステージになるので、「よくある質問」などで、不安を解消することで、次なる購買心理プロセスに進んでもらうのです。
- 最後に行動(Action)してもらうために、如何なる仕掛けを打つか…
「危険を冒したくない」という生存本能が影響しているのでしょう。
新しい行動は、うまくいけばメリットを享受できるけど、同時に見えないリスクがあるかも知れない…という不安を抱くのが人間です。
これは購買行動も同じです。
なので、興味もあって、優位性も十分に理解したけど、何か不安…という心理的障壁があることを意識して、これをどう乗り越えてもらうか?に心を配ることが大事です。
・事前電話相談 ・お試しコース などのリスクヘッジ策の提案。
・電話注文、FAX注文、メール注文、ネット注文など、顧客属性を配慮した行動しやすいアクションプランの提示。
など、行動を妨げる要素を、ありったけ想像してみて、それを解消する企画を企てるのです。
このように、Attention(注意)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)の段階を経て、購入に至ることを十分に意識して、各プロセスで、購買意欲が失速している理由はないか? を継続的に注意深く観察し、改善活動を行なっていくことが、真の営業努力というもの。
売れない…と、漠然と悩むのではなく、注意、関心、欲求、記憶、行動…どの壁を突破できていないか?
この5つの壁のどこで躓(つまず)いているのか? 究明する努力なくして、売上を伸ばすことは出来ません。
このように事実を考察すると、明らかに今の営業に求められるのは、頭脳戦です。
御社の営業部門は、頭脳戦で戦う体制を整えていますでしょうか?