「昨年から自社ブランドの商品を開発して、(社長自身が)売り込んでいます。しかし、なかなか上手くはいきませんね…」
前回のコラム「下請け企業の新規開拓を困難にする3つの理由」をご覧になって久しぶりにメールをくれた技術系の社長。
本業の営業体制を見直すプロジェクトをご一緒させていただいた直後、「やはりこのままで企業として持続させるには不安だ…」と、一念発起して下請け比率を少しでも下げるために「自社ブランド」商品を売り出したそうです。
たまたま近所に訪問する企業があったので、先週立ち寄ってお話を伺うと5分、10分の会話で「売れない原因」がハッキリと分かりました。
これは、技術や商品に自信がありすぎるが故に、よく陥りがちな罠です。
自信があることは、販売推進力の基盤ともなるので、とても良いことですが、能ある鷹は爪を隠す…の諺通り、冒頭から押し付けないことが大切です。
ご相談いただいた社長さんの提案書、プレゼンの順番を聞いたら、最初からアクセル全開。
せっかくの良い提案も、これでは相手が耳を塞いでしまう可能性はあまりにも高かかったのです。
提案営業で大切なことは、「何をどう伝えるか?」だけで思考を終始させず、「相手はどう認識するか?」を想定しながら話す順番を決めることです。
説得ではなく、納得させることが大事。
納得しないと、契約に至らないのですから、提案営業の目的は「納得」に導くことです。
営業の経験値が少なく、交渉事の訓練がされていないと、どうしても「相手を説得しよう」としてしまいがちです。
もちろん、創業者の強い想いに、相手が共振して、売れまくることもあります。
でも、その成功要因は、社長自身のキャラクターだったりします。
なので、もし強い想いをブチまけるだけでは、セールスが成功しない場合は、キャラが自分に合っていないということ。
アプローチを全面的に改める必要があります。
つまり「説得型」から、万人受けする「納得型セールスアプローチ」に改めるのです。
そのポイントは、2つ。
1つ目は、相手をよく調べ上げて「あなたが、当社の商品を使ったら、このような利益(メリット)を享受できるのではないでしょうか?」と問いかけてみることです。
「当社の商品を使うと、こんな利益(メリット)があります!」と押し付けるのではありません。
「当社の商品には、このような特徴がありますが、御社(あなた)が使えば、きっとこんな効果(利益やメリット)があるのではないでしょうか?」とアプローチするのです。
一見、同じように感じるかも知れませんが、買い手の認識からみると雲泥の差です。
「当社の商品はすごいぞ!」「こんな効果(利益やメリット)があるはずだ!」と声高々に言うと、多くの人は「反感」を持ちます。
もちろん、セミナーや公の文書であれば別です。
しかし、フェイスtoフェイスの商談では、極めて反感を持たれるリスクが増大します。
なので、効果を謳うのではなく、特徴だけを伝えて、「あなたが使えば…」と効果、利益、メリットを、買い手の想像から認識してもらうことが大事なのです。
そして、2つ目は、相手の想像力が乏しい場合、誘い水を用意することです。
誘い水とは、井戸のポンプから水が出ない時、水を導き出すために上から入れる呼び水のこと。
この誘い水の概念をコミュニケーションにも応用するのです。
普通、商談で商品の特徴を聞くと、効果、利益、メリットなどがぼんやりとは分かるもの…。
しかし、ぼんやりではダメで商談をスムーズに契約へと導くためには、明確に効果、利益、メリットをイメージしてもらう必要があります。
したがって、特徴を伝えた上で、この商品を購入したお客様が実際に得られた効果、利益、メリットを伝え、相手に明確なイメージを抱いてもらうのです。
これをセールスの世界では「第三者話法」と呼びます。
「この商品を使っているお客様は、このようにご評価してくださっています」
「この商品を導入した会社では、このような使い方をして、このような利益を得ています」
など、買い手の脳みそに映像が浮かび上がるくらい「ディテール(詳細)」のイメージを伝えていく…
すると、想像が浮かばなかった相手も、「ウチも同じようなメリットがあるかも」と導入効果を明確にイメージしてくれるようになるのです。
商品を購入する効果、利益、メリットを押し付けがましく訴えるのではなく、相手が効果、利益、メリットを想像できるように「話の展開」を考えること。
そして、効果、利益、メリットの明確なイメージを抱いてもらうために、誘い水を出すこと。
この2点をしっかりと準備していけば、提案営業の成功確率は俄然上がっていきます。
トップセールスをする社長は、是非ご自身でご準備を。
営業マンを抱えている社長は、是非営業マンに本コラムを印刷して渡してあげてください。