「画期的な新商品を思いつき、開発したのですが… 鳴かず飛ばずでして…
私の読みが間違っていたのでしょうか?」
以前、当社セミナーにご参加された方からのご相談。
お話を伺うと、確かに画期的な商品ですし、顧客の購入メリットも明確。
売れない方が逆にオカシイな…と思い、よくよくお話を伺ってみると、なるほど売れない理由に合点がいきました。
最大の理由は、明らかに想定ターゲットがズレた営業活動を展開していた、という点です。
確かなニーズがあると思い込んで上市した場合、初速の売上が悪いと愕然としてしまうのは、ある意味アタリマエの心理です。
ただ、ここで頭が真っ白になり「商品が悪いのでは?」と思い込んでしまうと、せっかくの売上拡大チャンスを逃すことになります。
まず疑うべきは「営業アプローチ」。
売り先が間違っていないか? 売り方が間違っていないか? 顧客目線に立って再評価していくことが大事です。
ご相談された会社とは、異なるケースではありますが、例えば、「つけないマスク」の事例をもって問題点を掘り下げてみましょう。
顔に装着する手間も省け、首からぶら下げるだけで、「バイキン」の侵入を防いでくれるので、至極便利なはず。
コンビニや量販店のバイヤーも、当初は「面白い!」と言って評価をしてくれたものの、実際に店頭に並べてみると全く売れない。。。
流通からは「返品要求」が殺到し、キャッシュフローを圧迫。
「あー目論見が外れたな…」と意気消沈し、営業活動をストップしてしまう。
そんなケースを想定してもらえると、状況をよりよく理解してもらえるかと思います。
そもそも、このケースは、「販売」を代理人に任せているのが問題です。
小売業者は、その商品に愛着などありません。
儲かりゃいいだけの話です。
売れない真意を突き止め、打開策を考えてくれるような「良い人」はそうそういません。
こちらから「こう売りましょう」「ああ売りましょう」と、突破口を開く提案をしない限り、「売れなかったですね」と諦められてしまいます。
「なぜ、つけないマスクは市場に受け入れられないのか?」その真意を探るのは、メーカーの仕事です。
外に出て、マスクをつけている人に片っ端から声を掛け、聞きまくっていくと、思いがけない事実にぶち当たったりします。
例えば、買い手がマスクに見出しているニーズの中には、「顔を隠したい」「寒いからマスクをつけている」といったものもあります。
「マスク」というのは、本来的機能は「バイキンの侵入防止用具」のはずです。
しかし、本来的機能とは別に買い手がメリットを見出していることは、よくよくあります。
このような買い手に、つけないマスクを投入したところで、全くもって受け入れられないのは、誰にでもわかるはずです。
また、本来的機能に価値を見出した買い手がいても、普通のマスクが300円で買えるのに、つけないマスクが仮に1000円だったら、これまた売れない原因の一つとなります。
こうなると、ドツボにはまる「負の思考回路」が走り出します。
「高いから売れない」
「市場が求めていることは違った」
そう、売れない理由を正当化し始めてしまう。
これは非常にもったいない。
ここで立ち止まって、買い手の購入メリットを追求した売り方を熟考することが大事です。
「高くても評価をしている市場はないか?」
「本来的機能を、絶対的な価値を、見出してくれる市場はないか?」と、思考を広げてみたり、掘り下げてみるのです。
風邪をひいて困る人だけはなく、ひかれて困る人はいないか?
顔にマスクをつけることにネガティヴな人だけではなく、マスクをつけられては困る人がいないか?
など、思考を巡らせてみるのです。
すると、サービス業の経営者やマネージャーが「スタッフに休まれては困るけど、マスクをつけられるのも困る」という突破口が見えてきたりする。
もし、ここに確実なニーズがあれば、あとは「購入コストに対する導入メリット」を突き詰めていくだけです。
「テーマパークや外食チェーンでは月に何件くらい風邪による欠勤があるのか?」
「突然の欠勤が発生した場合、どのような影響があるのか?」
「その影響から派生する余分な業務負担や流出コストは、発生しているのか?」
など、セールストークのネタになりそうな材料を収集して、1000円の価値に見合うだけの購入メリットを作り上げるのです。
もし、この営業アプローチが当たれば、外食チェーンやテーマパークのアタックリストをかき集め、拡販ステージに移行させることができます。
コンビニやドラッグストアの販売チャネルでは売れなくても、売り先を変えれば、全くの別商品のように売れ出す…。
こんなケースは、何ら珍しいことではありません。
諦めない姿勢と思考の幅と深度を広げる努力さえすれば、多くの場合は突破口が見つかるものです。
御社では、自社商品の売り先や売り方を再評価したことはありますか?