とことん「本質追求」コラム第262話 革新的な商品の受注率を引き上げる方法

 

 

 

「新商品を作り、既存の取引先に先行販売したところ、売れ行きもよく、使用評価も良かったのですが、肝心の新規開拓が進みません。

今度のセミナーでヒントをもらえることを期待しています」

 

6月9日に開催する弊社自主開催セミナーのご参加者の方から、ご丁寧なメールを頂きました。

 

せっかくなので、提案書を事前にメールで送っていただき、セミナーで近い事例をお話できれば、と考えたのですが…

 

提案書を見ただけで「お金の匂い」がプンプンする商品。

これで新規開拓が進まないのは、逆に理由がわからない。

 

と感じ、じっくりと商談をイメージしながら読み込んでいくと、「もしかして…」とある閃きを感じたのです。

 

電話をして、その直感を社長にお伝えすると、まさにドンピシャリ。

 

まだ、世の中にはない革新的な提案で、十分にお客さん側の必要性があるにもかかわらず、なぜか売れない。

 

これは意外にもよくあるケースであり、根本的な原因は2つしかありません。

 

1つ目は、セールスに対して、お客さんが疑心暗鬼になっていること。

2つ目は、お客さんが商品の必要性にピンと来ていないこと。

 

この2つです。

 

1つ目の、疑心暗鬼になった顧客心理を緩めていくアプローチは、手前味噌ではありますが、藤冨の専売特許である「波及営業」のロジックを組み立てることが有効です。

 

商品購入や売買契約の締結は、「お金を支払うだけの価値に対して“信用”できるか、できないか」が受注の成否を分けています。

 

従って、「いかに信用してもらうか?」が、受注率のキーポイントになるわけです。

 

  • 企業のブランドイメージが「信用力」を醸成することもあります。

 

でも、企業のブランドイメージが脆弱な中小企業では、これを期待することはできません。

 

  • 営業マンの人間性が「信用力」に結びつくこともあります。

 

しかし、営業マンの力量だけに頼っては、組織的な成長は、限界があります。

 

なので、波及営業の「あの人(会社)が、この商品を購入しているのなら、素晴らしい商品に違いない」という他の購買行動に影響を与えるインパクトのある顧客を神輿(みこし)に担いで、新規開拓を推し進めていく一連の営業活動が有効に機能するわけです。

 

これでセールスに対して、疑心暗鬼になる対策を組織的に講じることができます。

 

 

そして、今回のご相談で一番のポイントになりそうなのが、2つ目の売れない原因である「お客さんが商品の必要性にピンと来ていないのでは?」というポイントです。

 

提案書を見て、ここに藤冨のピントが合いました。

 

提案書を見れば、商談でどのように話を進めているのか、おおよその見当がつきます。

 

成果に結びつきにくい商談というのは「私の主張をわかってほしい!」という論調で話を展開させることです。

平たく言うと、商品の機能説明だけで終わっているケースです。

 

反対に成果に結びつく商談は、お客さんが「ある前提条件に気づき、その前提条件を改善したい、又は満たしたいと思い、そのツールとして、提案された商品・サービスが有効だ!」だと気づくプロセスがはっきりと見えるケースです。

 

イメージしやすい例を用いてご説明しましょう。

 

セールスの世界では、「イタリアの靴商人」という有名なお話があります。

 

アフリカに靴を売りに行った2人のイタリア商人。

 

現地では、全員が裸足で生活をしていました。

 

それを見た1人のセールスマンは、「アフリカには靴のニーズはないだろう」と売れないと判断してイタリアに帰りましたが、もう1人のセールスマンは「誰も履いていないから大量に売れる!」と思い、現地に残ったという話。

 

 

ただ、この時「どう売り込むか?」が問題です。

 

 

商品の機能・性能・特徴を一生懸命に説明して終わりでは、大量の注文を取るようなセールスはできません。

 

靴商人をイメージすると「靴を履けば、怪我をすることなく、どのような悪路でも安全に歩くことができます!」と伝えてしまう。

 

その通りなのですが、これではしょぼい成果しか期待できません。

 

売れる営業マンは、同じことを伝えるにも、切り口を考えます。

 

 

破傷風での死亡率などの統計を調べたり、病院に行って裸足による怪我などの事例をかき集め、「今まで足を怪我したことはありませんか?」と問いかけながら、「あなただけでなく、こんなにも多くのケースがある!と商品の必要性を知覚させる前提条件や商品の必要性を訴える土壌づくり」に気を配って準備しています。

 

いきなり商品の必要性を伝えるのではなく、必要性に気づく土壌をつくってから、必要性を伝える。

 

この微差が、売り上げに大差を生んでいるのです。

 

これを組織的にやれば、大きな成果に結びつく「波及営業」も展開できます。

 

例えば、医者や政府と組んだり、破傷風と裸足の生活習慣の関係性を広め、問題認識を先に刷り込んでいく。

 

インパクトとなるユーザーは、その怪我の頻度が多そうな職業・ライフスタイルを持つ人たち。

彼らに靴を使ってもらい、改善成果を宣伝していけば、普及の土台が出来上がっていきます。

 

こういった営業プロセスを設計していけば、新規事業も自社の次なる柱として立ち上がる可能性も膨らみます。

 

革新的な提案商品であればあるほど、商品の機能・性能・特徴を伝えて商品の必要性を訴えるのではなく、その必要性を感じる土壌を先につくることが大事です。

 

つまり、闇雲に売り込むのではなく、商品特性に合わせてセールスを設計することが業績に大きく影響するわけです。

 

御社では、闇雲に売り込むことなく、しっかりとセールスを設計していますでしょうか?