「以前は、ホームページからの問い合わせが、そこそこあったのですが…最近目に見えて少なくなってきています。検索エンジンでは上位表示されているのですが…」
以前、プロジェクトをご一緒した社長さんから数年ぶりにメールが届きました。
詳しい内容は書けないのですが、これは多くの企業に当てはまる問題であり、かつホームページだけでなく、営業マンの活動レベルでも起きる問題なので、テーマを変えてお伝えしたいと思います。
これまで売れていたのに、売れなくなってきた…。
この問題に対して向き合う際、よく犯しがちな対応策があります。
それは、対処療法を行うことです。
ホームページであれば、もっと露出を増やすためにリスティング広告を強化したり、関連サイトにバナー広告を出したり…。
リアルな現場であれば、営業マンの再教育をしたり、活動量を増やしたり…。
とかく「売り方」が悪いのを改善しようとしてしまいがちです。
しかし、現実は異なるケースがほとんどです。
「売り方」が悪くて売れなくなったのではなく、「お客様の受け取り方」が変わってしまったから売れなくなっていることが往往にしてあるのです。
これまで売れていたのですから、お客様には確かなニーズがあり、満足しているからこそリピーターもあったわけです。
ところが、市場は決して「静止」することはありません。
顧客は、常に様々な情報に触れており、新しい代替案にさらされているのが現実です。
もっと魅力的な競合商品が現れているケースもあれば、全く別角度から参入してくる競合によって、自社商品が無価値化されているケースもあります。
例えば、「タンス」であれば、同じ外寸なのに、収納力が優れている商品が登場するケース。これは直接競合なので分かりやすい。
これに対し、間接競合は少し見えにくい。
特に、市場にある程度広がるまでの「導入期」は見えにくく、気が付いたら対策が後手後手になることが多いのが間接競合の特徴です。
例えば、「タンス」を無価値化する「ウォークインクローゼット」の導入期においては、タンス屋からすると、「あれ?最近売れ行きが悪いな」と思う程度だったと思います。
家具屋に行っても、競合に全く気付かず、売れない理由がよく分からない。
1年、2年と月日が経った頃に、「あっ!」と気付く。
売上が激減する前であれば、善後策を打てるのですが、多くのケースでは、ジリ貧になってから気が付くことが多いために、大胆な策に打って出ることができない。
細々と経営するか、撤退するか… そんな後ろ向きな経営しか選択肢が残らないことも、ままあります。
なので、今回ご相談いただいたように、雲行きが怪しくなってきた瞬間に、“問い合わせが激減している。または、売れなくなってきている真の理由”を察知することが大事だと強く感じています。
今回のケースは、まさに「見えにくい競合」が存在していました。
どうやってそれに気付くか?
これが大事なので、皆様とも共有したいと思います。
間接競合の察知力を高めるためには、常日頃から「私は何を売っているのか?」を顧客目線で捉えることが大事です。
タンス屋の経営者100人に「何を売っているのですか?」と聞くと、おそらく大多数の人が「はぁ?見れば分かるでしょ。ウチはタンスを売っているのですよ」と言うのではないでしょうか。
でも、その視点だと直接競合にしか気が付けない。
間接競合の存在を察知するためには、「洋服の収納庫屋」と自らの事業を定義する必要があります。
すると、
- 顧客が洋服を収納する際に困っていることは?
- 今の収納に満足していない点は?
- もっと清潔に保管するためには?
- もっとベストな状態で衣類を守るには?
- もっと取り出しやすく、もっと整理しやすい保管方法はないか?
と、収納庫という機能的側面を余すところなく見渡せば、あらゆる課題を掲げることができるわけです。
すると、仮にウォークインクローゼットが市場に広がったとしても、活路を見出す打ち手が、幾通りも創案できる。
キャッシュが潤沢なうちに、様々なトライができるから余裕を持って経営に当たることができる。
なので、成功確率の高い取り組みができるわけです。
冒頭の社長さんの直感は素晴らしく、「なんか変だな…」と感じた瞬間に「何が起きているのか」を掌握されようとアンテナを高くしました。
そして、数時間後には、ほぼ間違いなく「何が原因で問い合わせが減ったのか?」の真実を知ることができたのです。
もう少し時間をかけて「真実」を追求する必要はありますが、こういった顧客目線からのモノの見方は、これまでの経験上まず外れることはありません。
顧客の購買プロセスから見れば、見え方はとてもシンプルだからです。
私は何を売っているのか?
お客様は何を買っているのか?
そして、購入意思決定時に、何と比較しているのか?
いつ競合から攻められても迎撃できるよう、御社自らの事業を顧客目線でしっかりと捉えていますでしょうか?