「AI(人工知能)は、BtoBの営業領域に浸食できない…との事ですが、もう少し詳しく聞かせてもらえませんか?」
先日開催した自主開催セミナーでお伝えした内容について、事後相談のときに、改めてご質問いただきました。
経営者にとって、来たるAI時代に知見を深める努力をすべきか…今の時間の使い方を決定するうえで、重要な視点だと藤冨は考えます。
我が社の事業活動においては、AIの影響は軽微である…と判断すれば、あえて知見を深める必要はありません。
そんな時間があれば、より売上の上がる策について突っ込んだ方が業績は上がります。
逆に高い確率で影響を受ける…と予想すれば、“いつ、どのような状態になったら、投資判断をすべきか”を早い段階から想定しておかなければなりません。
そういった意味において、単なる余談として捉えずに、しっかりと概要を掌握しようという貪欲な社長さんは個人的には大好きです。
話を戻しますと、私はBtoCの事業モデルにおいては、相当な確率でAIは活躍すると私は確信しています。
また、BtoBにおいても、消耗品や定期的に同じようなものを購入する商品はAIが営業マンの代替になる可能性は大です。
15年ほど前は、ネットで商品を購入するのは不安だ…という人が大多数を占めていました。
が、今は逆転して、大多数の人がネットで商品を購入しています。
総務省の「情報通信白書」によるとネットショッピングの個人利用率は全年代平均で7割を超えているとのこと。
ネットでの購買件数…つまり購買履歴データが蓄積されればされるほど、レコメンド機能(利用者の好みにあった物品やサービスを推薦する手法)は、精度が高まります。
過去の購買履歴データだけでなく、
- 購買履歴から読み取れる嗜好性
- 閲覧時間と購入の相関関係
- 購入決定時の比較検討など、
様々な購買行動時におけるデータを数値化できるネットは、人間(営業マン)では不可能な「好みに沿った提案」をしてくれる確率が飛躍的に高まります。
現実、私の購買行動を振り返っても、営業マンや販売員の提案によって購入を意思決定したケースは、最近では思い出せないほどレアケースとなりました。
技術革新の進度から想定しても、このようなデータ蓄積は、ネットのみならず、これはリアルな店でも普及するはず。
となると、単独で購入の意思決定がされる商品の営業・販売活動は、人間よりもAIの優位性が高まる事は簡単に予想されるわけです。
反面、BtoBにおいては、この確率は低いと藤冨は捉えています。
その理由は2つ。
1つ目は、BtoCや、BtoBでも消耗品のような商品は、人工知能が学習する分母となるデータが蓄積されにくい点にあります。
ビックデータを学習すればするほど賢くなる性質を持つAIにおいて、データの弱小性は偏ったアウトプットにつながるため、使い物にならない可能性が大だと捉えているのがその理由です。
2つ目は、営業現場をつぶさに読み取れば分かることですが…
BtoBにおいては、意思決定が複雑かつブラックボックス化しています。
社内の力関係や、社長のその時の気分、意思決定の関与メンバーなど、購買行動のパターンを読み取るのが難解で、ブラックボックス状態です。
ブラックボックス化された意思決定であるがゆえに、購買決定や否決と何が因果関係にあったのかを学習できません。
営業マンでも、ほとんどが「勘」と「憶測」によって「受注・失注要因」を判断しているはずです。
概念の獲得は、AIの苦手分野です。
客観データの収集ができない限りは、AIがBtoBの営業現場で活躍する確率は極めて低いと感じています。
(営業マネージャーの意思決定は別です。詳細は「第197話 人工知能は、営業トレーナーを不要にする?」をご覧ください)
従って、BtoBの事業モデルにおいては、AIによる営業の代替可能性は極めて低いので、別な生産性向上策を講じることが大事です。
しかし…様々な業種・規模の企業の営業現場を拝見させていただく機会が多いのですが、自社の営業活動の強化すべき点やムダを省いていくポイントを正確に掴もうとしている会社はそう多くありません。
営業現場で何が起きているのか?
これも正確に掴んでいる会社は、そう多くありません。
ということは、自社の売上が上がる瞬間から営業プロセスを分解していき、「何が起きているのか?」「何を強化し、何を諦めるのか?」のポイントを正しく掴み、対策をとれば、ライバルに勝つ事ができます。
AIなどの技術革新に対するアンテナは立てておく必要はありますが、それと同じくらい自社の仕組みを観察・分析することが大事です。
御社では、環境を見る「外の目」と、自社の内部を洞察する「内の目」の双方を大事にしていますでしょうか?