とことん「本質追求」コラム第247話 売上を増やしたければ、分母を増やしなさい。

 

 

 

「売れない原因を徹底議論しているか…先日のコラムはおっしゃる通りなのですが…それが分かれば苦労はないですよね?」

 

先週、とある経営者の集まる昼食会に呼ばれた際、たまたま本コラムを毎週読んでいるとおっしゃる方の隣に座りました。

 

名刺を交換したら「あれ?藤冨さんじゃないですか!」とおっしゃるので拙著の読者さんかと思いお話を伺うと、本だけでなくコラムも読んで下さったとのこと。

 

悪いことはできないな…と思いながらも、コラムの感想を聞きました。

 

すると「先日のコラムを読みましたが、分かっちゃいるけど出来ないのが現実ですよね?」

とおっしゃるので、どんな商品を売っているのか? 少し掘り下げて伺うと…

 

「なぜ売れないのか?」不思議なくらい良く考え込まれた商品だったのです。

 

聞けば、コンサルタントが入って新規事業企画を練り上げたらしくSWOT分析やら4C分析などを駆使して、編み出した新商品とのこと。

 

たしかに良く考え込まれた商品でした。

 

しかも、インターネットで関連商品をサクサクと検索してみても、独自のポジションでもあるし、検索エンジンにおける「言葉の需要」も確かにある。

 

正直言って、売れてもおかしくないのに…という思いが沸々と湧き起こってきたので、WEBサイトはありますか? と伺うとカタログを出しながらその商品がアピールされているホームページを教えてくれました。

 

その瞬間、思わずガクッときてしまいました。

 

WEBサイトを見るまでもなく、チラシを見た瞬間に「なるほど、これじゃ売れないな…」と感じたからです。

 

もちろん、サイトも閲覧しました。

しかし、その感触は強まるばかりです。

 

今すぐに改善しないと、勿体ない!と感じ、ご縁に感謝をしながらアドバイスをさせてもらいました。

 

一言で言うと、社長が熱く語ったその商品の魅力が、チラシにも、WEBサイトにも織り込まれていなかったのです。

 

それを伝えると、「それは分かっているのですが、説明すれば大丈夫ですよね?」とおっしゃるので、その認識はピシャリとやめていただくようご助言しました。

 

買い手が購買行動を起こすか起こさないかは、「商品の接触時における認知」によって変わります。

 

どう認知されたか?

この一瞬の接点に思いを馳せなければ、何時まで経っても「売れる企画」はできません。

 

あとから説明で補足すればいいか…

なんて悠長なことを言っている間に、見込客はどんどん流れていってしまい商談にすらならないことが頻発するようになります。

 

仮に聞いてくれたとしてもファーストインスピレーションで興味を抱かせていないと、購買意欲を刺激するのは難しくなってきます。

 

興味があれば、説明によって興味を増幅させることは容易です。

ところが、興味がない状態から、興味を抱かせるにはパワーが必要になります。

 

 

説明する人(社長自身や営業マン)の体調や気分が良く、ノリにノっていれば、そのパワーは発揮できるかも知れません。

 

しかし、体調や気分の調子は一定ではありません。

また、相性の問題もあるために、コミュニケーションの質を一定に保つ事は厳密には不可能です。

 

そんな不安定な要素に、「売上を依存」させるのは得策ではありません。

 

できうる限り売上のトリガーになるべき要素には、安定的にコミュニケーションできるものに比重をおくべきなのです。

 

 

つまり、商品のネーミングやパッケージ、デザインなどの視覚的に感じる要素やチラシ・WEBサイトなどの無言のセールスマンに着目して、ファーストインスピレーションで購買意欲に火をつけることが重要なのです。

 

 

ここの手を抜くと、商談数は激減します。

 

以下の図をご覧ください。

 

AIDMA

 

これは、統計学的に藤冨自身も実際のビジネスの中で検証したことですが、同じ営業アプローチなら下に降りる確率は同一になります。

 

「この商品面白いかも? と“気づく”人」が100人いた。

 

その中で、チラシやWEBサイトのキャッチコピーや商品のデザインなどをよく見るうちに「この商品良いかも?と“興味”を抱く人」が60人いた。

 

その中から、チラシやWEBサイトをさらに読み込んだり、営業マンに話を聞いたりして、「この商品スゴいかも! と“欲求”を抱く人」が30人。

 

さらに、コストや性能・機能を吟味して、「この商品、買う価値があるかも!と“評価”をする人」が10人。

 

そして、「今買おう! と“意思決定”をする人」が5人。

 

といった具合に、セールスプロセスと購買意思決定プロセスの過程で、どんどん絞られていくのが現実です。

 

従って、如何に「気づき」の絶対数を増やすか。

 

如何に「興味」を抱く人の絶対数を増やすか。

 

如何に「欲求」を抱く人の絶対数を増やすか。

 

如何に好ましい「評価」を下す人を増やすか。

 

如何に今スグ判断すべきと「意思決定」をしてくれる人を増やすか。

 

 

営業活動は、この思考回路をなくして、「売上増」を期待することなどは出来ないものなのです。

 

この現実を厳粛に受け止めると、「説明すれば分かるのでは?」という売り手の発想が如何に怠慢か? 理屈としてすぐに理解できるはずです。

 

冒頭の社長さんも恥ずかしそうにおっしゃっていました。

 

「確かにそうですね…。相変わらず分かりやすい…」と。

 

コラムに載せる事はご承諾いただきましたが、その社長さんは、最後に問題の中核をえぐり出してくれました。

 

「コンサルタントを雇って、自社を客観的に見つめて良い商品さえ作れば売れると思っていました。でもそれだけでは成功しないのですね。受注から遡って分母を増やしていく営業施策を一から考え直してみます!」と。

 

御社は、受注から逆算して、どうやって分母を増やしていくか… そういった思考回路で商品企画や営業戦略・戦術アイディアを絞り出していますでしょうか?