「前回のコラムはまさにおっしゃる通り。営業マンの士気を上げて“売れる空気”をつくり出すのは、トップの役目ですね」
先日、クライアント企業の社長さんからコラムの感想が届きました。
同社は、既存事業が停滞するなか、新市場への拡販がヒットして、前年対比200%増は確実といった業績で推移している勢いある企業です。
当時を思い出します。
「売れるから、士気が上がるのか?」
それとも
「士気が上がっているから、売れるのか?」
ニワトリが先かタマゴが先か…
そんな議論を真剣に交わしたプロジェクトでした。
私の答えは明快です。
士気が上がっているから、売れるのです。
これは、藤冨の現場経験からも絶対だと言い切れますし、世の常もそうだと思います。
3年前のNHK大河ドラマ「黒田官兵衛」を見たときもそう感じました。
あれは“英賀合戦”の一コマだったと記憶しています。
5000の軍勢で攻めて来た毛利軍に対し、官兵衛側が動かせる軍はたったの500人。明らかに劣勢のなか、“敵は水軍。長い間の移動で疲れ果てているはず。勝つなら今だ!” と奇襲をかける策に官兵衛は打って出ました。
さらに、農民に「援軍」が大人数いるように錯覚させるために、大量の旗を掲げさせながら奇声をあげさせ、自軍優勢の空気をつくり出したのです。
ビビった毛利軍は撤退。
10分の1の軍勢で、見事毛利軍の攻略を水際で抑え込んだ…という内容でした。
ここで見て取れるのは、相手の心を折る策略も功を成していますが、自軍の軍勢を奮い立たせる為の効用も働いていたということ。
前線で優勢が保てたから勝ったのではなく、この作戦なら勝てる!という空気感が士気を上げ、勝ち戦を収められたのです。
これは紛れもない事実です。
これを営業に置き換えてみれば、トップはどのような策を打てば「売上」が上がるか…くっきりと見えてくるはずです。
競合と比較して強みを売り出せない商品…。
これで、相手に魅力的な提案が出来るでしょうか?
営業現場では、営業マンが一生懸命アタックしても「だから何なんだ!?」と一発でノックダウン。
次のリストにアタックしても、その次のリストにアタックしても、けんもほろろ。
これで士気が上がるのは、ちょっと頭のネジがぶっ飛んでいる営業マンしかいません。(ちなみに、私はこのタイプでしたが…)
普通の人なら、バカバカしくなって営業に行くフリをして、その辺の喫茶店で転職サイトを眺めているのがオチです。
こんな状況でも、「教育をして業績を上げましょう!」と研修会社にそそのかされて営業マンを締め上げている会社も時々見かけるので、開いた口が塞がりません。
B29を竹槍で落とせ! という敗戦間際の指揮官を見て、誰もがおかしい…と思うのに、自分事になると全く気づかずに本末転倒な指示を出している。
これでは現場があまりにも可哀想です。
こんなときは、一旦前線から引き上げることが肝心。
負け戦は出来うる限り避けることは、戦い方の原則だからです。
一旦、現場から離れ…
- 我が商品の優れているところは何か?
- 競合と比較してどう違うのか?
- その特徴をもってして、顧客はどのようなメリットを享受できるのか?
こういった「勝てるポジション」を徹底的に突き詰めた上で、「これなら売れる!」という空気をつくり出す。
もし、それが見つからないのなら、商品やサービスの企画からやり直して、一から出直す。
その方が、結果的には早く業績を右肩上がりの軌道に乗せることが出来るはずです。
競争戦略におけるポジショニングを履き違えたままで、事業を推進すれば必ず出直しを迫られます。
その期間中にトライした「マーケティングや営業投資」のみならず、その間の固定費も丸々大損となります。
ポジショニングの変更は、商品開発からやり直せば大掛かりになりますが、スポットライトの当て方によってポジションが変わることもあるので、たった1日で新しい戦略組みが出来たりすることもあります。
なので、見たくないものにフタをするのではなく、勇気を出して「売れない原因」をしっかりと見つめる。
そして、
- 我が商品の優れているところは何か?
- 競合と比較してどう違うのか?
- その特徴をもってして、顧客はどのようなメリットを享受できるのか?
を顧客接点に立つメンバー全員で「勝てるポジション」を共通認識して持ち合わせる。
こうして“勝てる空気”をつくり出し、士気を上げてから現場へ放り出していくことが「勝ち戦」をするための原理原則になります。
売れない原因を営業マンのせいにしがちですが、本当に営業マンの努力不足が原因で売れないのか。
まずは本質を追求してみてください。
御社では、売れない原因を徹底議論していますか?