とことん「本質追求」コラム第237話 下請け事業からの脱却

 

 

 

「自社ブランド商品の企画をしたいと思っています。法人向けと個人向け、どちらが営業的には売りやすいでしょうか?」

 

 

こういったご相談は、以前からありましたが、ここ最近特に顕著になってきたように感じます。

 

ご紹介案件が多くなってきたのもありますが、事業プロセスにおける需給構造が変わってきたのでしょう。

 

いわゆるスマイルカーブ現象と言われるもので、この構造が著しく進展してきている何かしらの背景があるのでしょう。

 

アジア各国の部品メーカーが育ってきていたり、IoT、自動化、ロボット化など非労働力による生産性向上。また部品のユニット化の進展など、これまでの下請け事業の食い扶持がなくなりそうなテーマ(背景)がゴロゴロと転がっています。

 

この流れは、止まることも、また緩まることもなく、さらに加速化されてくるのは、容易に想像できます。

 

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となると、自社ブランド商品をつくり、独立独歩の経営スタイルを模索することは、今や逃れられないテーマになります。

 

このときに、自社の技術をつかって、何を作れるか…この最初の一歩を間違えると莫大な投資と時間をムダに浪費することになるので、賢い経営者ほど、深く熟考しています。

 

 

あれなら作れる。

これなら作れる。

 

と、安直に試作をしたりはしません。

 

自社の強みを活かせ、かつ市場に強い欲求のあるものは何か…熟考に熟考を重ねています。

 

このような経営者の中で、ある程度の方向が見えたときに、「それは作れるのか?」を掘り下げる前に、「それは売れるのか?」を考える人がいます。

 

こういった方の成功確率は高い。

だけど、意外にも下請け事業を長くやっていると、この発想が出にくいのも現実です。

 

なぜなら、仕事の視点が「取引先の技術的要求を満たすこと」が主になっているから。

 

だから、「それは作れるのか?」という視点がどうしても強くなってしまいがちです。

 

でも、作れても売れなきゃ、そこにかけた思考と作業の時間は全てムダになる…。

 

だから、売れるものを考えたうえに、それをどう作り込むか…。

というゴール(販売と満足)から逆算することが大事なのです。

 

冒頭の「個人営業(BtoC)なのか、法人営業(BtoB)なのか?」は、商品企画を企てるときから、選別フィルターとして頭に入れておく必要があります。

 

その理由は、大きく分けて2つあります。

 

一つ目は、金…つまり投資額の問題です。

営業プロセスから見ると、売上という成果を勝ち取るためには、見込客の集客と商談という2つの階段を上る必要があります。

見込客を集めるには、宣伝や営業マンの人件費、活動費などのコストが発生します。

見込客がセグメントを絞りきれていなければ、集客コストは上がりますし、見込客のたまり場にアクセスする費用も勘案する必要があります。

 

BtoCの場合、見込客のセグメントはBtoBと比較すると、セグメンテーションが難しく、集客コストは上がりがちになることが多いです。

 

また、見込客のたまり場…つまり読む雑誌や新聞などの媒体。心理的属性が似通った所属グループなどにアクセスする費用もBtoCは高め。

 

一般紙の広告費用と、業界誌の広告費用を比較すればお分かりの通りです。

また、所属グループも法人ならば、業種の協会や経営者が所属するグループなども明確でアプローチしやすいのですが、BtoCは、その「たまり場」のアクセスにも一苦労することが多い。

 

つまり時間の投資が掛かる分、その期間中に流出する人件費を考えると、市場へのアクセス費用が膨らみがちになるのです。

 

ただ、チャネル開拓…つまり販路を絞ったカタチで、そこから突破させる作戦であれば、BtoCであっても、BtoBに近い営業活動が出来ます。

 

板金会社が「こだわりの削り出し工法で作った10万円もするiPhoneケース」が伊勢丹でかなりの数が出ていたり…

同じく板金会社で、3万円もするメタル製のバラのアクセサリーが同じく伊勢丹などの百貨店や都内有数のフラワーショップで売れていたりします。

こういったケースは、「顧客の購買意欲を刺激するという視点ではなく、販路から需要を喚起する」手法で活路を見出しているのです。

 

これなら、市場へのアクセス費用が抑えられます。

 

 

また、もう1点はの問題。

これがとても大事です。

営業活動において、受注確率をあげる最大のキモは、商品に強い思いを抱き、その商品が誰かのためになる…という期待と実感が売上に繋がっていきます。

 

売れる営業マンが、自社商品に強い愛着を持っているのは、周知の通りです。

 

端的にいうと、開発した商品が世の中に貢献できる喜びを感じられるか否か…。

単に売れれば良いという自己都合優先になっていないかどうか…。

 

これは商売の成否に大きく影響してきます。

 

ただし、これだけでは上手くいきません。

 

「好き」という感情に+αの要素が必要です。

その+αの要素は、「得意」ということ。

 

私の場合で言うと、これまで外食産業向けに情報システムを販売してきたり、広告を販売してきました。

 

個人客に営業するよりも、法人客に営業する経験値は高いです。

従って、個人客よりも法人客に営業する方が、成功確率は高くなります。

 

「好き」と「得意」

この2点が重なり合っている商品が企画・開発できるか…

 

この視点も見逃してはなりません。

 

 

営業活動における「受注確率」の高さは、売上に繋がるスピードに繋がります。

 

売上に繋がるスピードが早いという事は、営業期間中の「流出人件費」や「減価償却」などの固定費負担を早期に回収できることにも繋がります。

 

また、作ってみたものの、あまりにも金が掛かり過ぎて結局販売活動をやめてしまった…。

そんな笑えない話は、そこら中から聞こえてきますが、これは企画段階での失敗例の典型例です。

 

 

事業創造で大事なことは、作れるか否かの前に、売れるか否かを商品企画の段階からフィルターに通しておくことです。

 

御社では、新規事業開発の際に、売れるか売れないか…と人と金の面から精査をしていますでしょうか?