「新規開拓が思うようにいかずに営業部全体が疲弊してきています。商品が悪いのか、それとも売り方が悪いのか、どちらだと思いますか?」
先日、ご相談を受けた社長さんが呟いた一言。
どこに改善テーマがあるのか? を探る為に、営業部の皆さんともディスカッションしたのですが…
根本的な問題があることに、スグに気がつきました。
目標となるべく、「明確なる仮説」が戦略にも戦術にも存在していなかったのです。
よく「失敗は失敗であり、成功の基にはならない」と言う人がいます。
ただ、営業戦略の立案や戦術の実行において言えば、これらの見方は正しい捉え方ではありません。
失敗はあくまでも失敗である…という見方は、自分の準備不足、努力不足を戒める言葉としては、正しいと思います。
しかし、最短距離で成果をあげることを目指すのであれば、明確なる仮説を作った上で、成果を検証していく姿勢を組織的に行うことが肝要です。
その仮説も原理原則に則り、胃がキリキリするほど考え抜かれ、戦術の細部にまでしっかりと浸透させるくらいの覚悟で作り上げる必要があります。
そこまでするか…
くらいに仮説を練り込み、セールスプロセスの随所ににじみ出していくことができれば、それだけでも成功確率は上がるものです。
戦略としては、自社が持つどのような「強み」をもって、どのようなターゲット(市場層)に攻め込むのか?
また、このときに、時代性の波にのっていれば、戦略面としての仮説精度はかなり高いものとなります。
後は、あらゆるケースを見てきた目利きのフィルターを通して、仮説が独りよがりになっていないかを検証するだけです。
私がお手伝いしている会社の多くは、こうした投資や時間を端折ることがありません。
仮説の精度が荒ければ、戦術も荒くなり、組織を動かしたときの経費がムダに流れることになることを熟知しているからでしょう。
経験上、戦略が明確であれば、必然的に具体的な戦術、つまり何からどう手を付け、どのように新規開拓を進めていくか…は明確にイメージできるようになります。
例えば、一般家庭にも施工できる防音材を売っている建材メーカーが、どうやって市場開拓をしていこうか?と考えた際、様々なターゲットが想定できます。
・ピアノなどの楽器を習っている人。
・音楽鑑賞が好きでオーディオマニアの人。
・子供を室内で思いっきり遊ばせたい人。
・室内犬の無駄吠えに困っている人。
・新婚夫婦の一室…
いろいろと必要性を感じるであろう人達が思い浮かびます。
この時、一般的にはSWOT分析などの市場評価法のフィルターを通して勝ち戦になるか…を評価していきます。
- 自社の「強み」としては、一般的な防音室よりも半分くらいのコストで導入できる。
- 弱みとしては、防音室よりは音漏れが生じてしまう。
- 機会としては、高齢者の多趣味が広がり、音楽を楽しむ人が増えている。
- 脅威としては、少子高齢化であり、所得格差が激しくなっている。
などなど、一般論での評価を行っていくのですが…
個人的には、こういった分析は必要ではあるものの「机上の空論」に終わりやすいので、さらにもっと突っ込んだ仮説検証をすることをオススメしています。
なぜなら、この評価検討だけでは、具体的な戦術を細部までイメージすることが中々できないからです。
なので、実際の商談をイメージしてロープレしてみることを藤冨はよく推奨しています。
商談がうまくいくケースを想定した場合、商談相手が「購入する理由」を明確にイメージできるようにすること。
商談中に出るであろう「断り文句」を具体的にイメージしていくこと。
この2点にフォーカスするだけでも、その対象市場に攻め込む事が容易か否かのイメージを摑むことができます。
そして、そのイメージから「どのようなセールスツールを準備して、どのようにコピーを書き、商談ではどのように口説いていくのか?」といった具体的な戦術の仮説が出来上がっていきます。
誰に、どのように働きかければ、受注確度の高い商談ができるのか?
という明確なる戦略が、どのような活動をすれば良いのか?という戦術を作っていくのですから、この一手間を惜しむのは勿体ない。
もちろん、実際にテスト営業をすることが出来れば、より精度の高い戦略の仮説検証に繋がりますし、戦術の微調整も出来やすい。
よく言われている「PDCAをまわせ!」と言う事ですが、営業におけるPDCAにおいては、顧客の顔が見えるまで、最初のP(プラン)つまり仮説を研ぎ澄まさせておくことが何よりも大事です。
ここまで仮説づくりを徹底していれば、結果がどちらに転んでも、原因が明確になります。
失敗であれば、その原因となるものを潰すだけですし、成功したら、その勝ち要素をもっと強化できないか?を考えるだけです。
失敗が成功の基になる…という「基」は、基盤をつくることに他なりません。
一度、犯した失敗を二度と経験しないようにするには、明確なる原因追及が大切です。
そのためには、明確なる仮説が必要不可欠となります。
御社では、仮説 — 検証を愚直に行っていますでしょうか?