とことん「本質追求」コラム第230話 受注の成功確率を極限まで上げる努力とは

 

 

「ちょっと事情がありまして、なるべくコストをかけずに事業を立ち上げたいのです。何か良い手立てはありますでしょうか?」

 

 

・前回大規模なコストをかけて失敗した経緯がある。

次は、社内での体裁を保つ為、失敗が許されない。

 

・リスクを出来るだけ減らしたい。

 

様々な事情があって、マーケティング投資や営業コストをかけずに、キャッシュを生み出したい…というご要望を時々受けます。

 

本来であれば、ちゃんとコストをかける方が、腰が据わり成功確度が上がるので、投資の覚悟を持って頂きたいのですが…

 

事情が事情であれば、致し方ないケースもあります。

 

 

そんなときには、既存顧客への「リプレース」「クロスセル(関連商品の提案)」または「紹介商談の誘因」といった働き掛けが最も確実性が高く、コストも殆どかけずに売上に繋げることが出来ます。

 

取引先が、大手企業である場合には、部署や事業所間を跨いだ横展開を意図して仕掛けることも出来、新規顧客を獲得するのと同等の効果を得る事も期待出来ます。

 

そんな話をクライアント企業さんに促すと、咀嚼しきれていない様な感じを受けたので、実践に移して頂くためにも、噛み砕いてお話をすることに致しました。

 

 

「まずは、しっかりと拡販ツールを作り込み、既存顧客に表敬訪問の体で紹介商談を掘り起こしていきましょう」と。

 

拡販ツールとは、導入事例のインタビュー記事と、自社の強みと顧客の導入メリットを的確に落とし込んだ商品パンフレットを指します。

 

ここで多くの方は、「なぜ既存顧客に、そんな手の込んだツールを作り込む必要があるのか? そんな面倒なことをしなくても、お客様はよくウチのことを知っているよ」と思われるようです。

 

お話していた社長も、「はぁ?」という顔をされていたので、続けてお話しました。

 

「社長、いま自宅にある冷蔵庫は、何が決定打となって購入の意思決定をしましたか? たぶん、その時CMや家電販売店の店員から”製氷がすぐに出来る”、”乾燥しない機能がある”、”庫内面積が一番広い”などなど、その冷蔵の特徴や機能を説明され、それはいい!と感じて購入されたハズです」

 

「でも、覚えていますか? そのときの意思決定基準を…」

 

とお話しすると、

 

「なるほど確かにそうだ!」とガッテンがいった様子で、既存顧客へのアプローチ戦術を実践する方針が即座に固まりました。

 

 

交渉でも、営業でも、コミュニケーションは何でも同じですが、相手のおかれた環境、状態、感情などを正しく汲み取ることが出来、的確な対処が出来たときに、始めてコトはうまく運びます。

 

逆にうまく行かないときには、相手の状態、感情を置き去りにしたまま、一方的にこちらが働きかけているときです。

 

 

これは、既存顧客へのアプローチも同じで、商談の成功確率や紹介商談の掘り起こし確率に大きな影響を与えています。

 

当社商品を利用してくれているのだから、相手は私(自社商品)のことを理解してくれているだろう…というのは、勝手な思い込みにすぎません。

 

いえ、仮によく理解してくれていたとしても、子供を諭すように切り口を変えて何度も同じ情報を伝えるべきなのです。

 

お客様をバカにしているようで気が引けます…という方もいますが、それは逆に傲慢な姿勢だと改めるべきです。

 

だって、仮にお客様が、正しく理解していなければ、お客様に恥をかかせてしまうことにだって繋がるからです。

 

そもそも、私たちは自社商品と毎日向き合っているので、機能、性能を正確に記憶できますが、買い手であるお客様にとっては、沢山の数ある商品のなかの一つに過ぎません。

 

お客様は、様々な仕事をかかえ、様々な意思決定をしています。

それは、仕事外の日常生活でもしかりです。

 

だから、以前購入した時に購買決定ポイントになった商品の特徴など正確に記憶しているはずもないと謙虚な気持ちでいた方が良いのです。

 

 

  • 紹介商談が欲しい。
  • 他の部署や事業部に当社商品を推薦して欲しい。
  • 新しくバージョンアップした商品にリプレースして欲しい。

 

などなど、既存顧客から、商品を波及させたいときには、新規開拓の営業と同じくらい丁寧な姿勢をもって挑むことが大切です。

 

そして、紹介や推薦を得たい場合は、顧客が誰かに紹介するときの場面を明確にイメージして、どのようなトークやツールが必要か…を想定し、事前に相手に渡してあげることで、成功確率を上げていくのです。

 

これはリプレースにしても同様です。

商談相手が担当者であれば、上長にリプレースの必要性を訴えかける材料を準備することが大切です。

 

拙著「営業を設計する技術」にも書いてあるとおり、商談は商談ルームで決まるわけではありません。

 

相手先企業の「会議室」で決まるのです。

 

だから、しっかりと自分の分身…つまりセールスツールを会議室に潜り込ませなければなりません。

 

しかもリプレースとなれば、担当者が、あまりにも熱心に社内セールスをすると「癒着か?」と疑われることもあるでしょうから、担当者への配慮としても社内営業の材料は必要となります。

 

 

営業は、買い手の感情、行動そして、意思決定ルートをしっかりとイメージした上で「成功するための営業設計書」を描くことが大切です。

 

御社の営業活動では、その営業設計書は明確に描かれていますでしょうか?