「営業部門から売上に繋がらない“展示会”に予算を割くのはムダですよ…と突き上げがきているのです。どう思いますか?」
創業20年になる企業の社長さんから「新しい新規開拓の手法を取り入れたい」というご相談にのっていたときの質問です。
話を伺うと、創業以来ずっと展示会に出展していて、当初は新規開拓のほとんどが展示会からリードされていたとのこと。
ところがここ数年、展示会からリードした新規は、ほぼゼロの状態が続いていて、営業からのブーイングは年々強まっているとのことでした。
新規開拓のリード元の過半数は、インターネットから問い合わせ。
営業としては、「もっとネットに金をかけるべきでは?」という意見が強まるのは、ごくごく自然のことだと感じました。
100万円近くもの投資がかかる上に、展示会当日は営業マンも時間拘束されてしまいます。
集まった名刺も、受注確度が低いものばかりなのに、「せっかく展示会に出たのだから、ちゃんとフォローしろ!」と毎週の営業会議で進捗報告をしなくてはなりません。
展示会前後の1ヶ月半は、自分のペースが崩される上に、予算を達成しないと、どやされる。
「自分のやり方でやらしてくれれば、予算責任は取れるけど…。勝手に展示会を開いて、展示会の案内から設営準備、さらには営業フォローまで時間拘束をされて、予算を達成しろ!なんて……無茶ぶりですよ」
まぁ、営業部のからの声にならない不満を吸い上げると、おおよそはこんな感じになるでしょう。
今、問い合わせの大半を占めるWEBからの見込客集めなら、明確なニーズがある上に、準備などで拘束される時間もゼロ。
営業部としては、これほど有り難いことはありません。
ただし、WEBは効率がよく、展示会は非行率なので、どっちかにしましょう。という決断は慎重にしなくてはなりません。
前述の社長さんも、「古くからの顧客は今でも展示会のブースに訪れてくれている。出展をしないと“元気がないんじゃないか?”と思われ、他社に浮気されかねない。だから必要だと思うのです」とおっしゃる通りに、新規だけではなく「追加受注」や「浮気防止策」としての役割を担っている可能性もあります。
また、先日、別のクライアント企業さんのサイト分析結果を拝見したときに、「展示会後に明らかにWEBのアクセス数が伸びているし、滞在時間も長い。参照ページ数も上がっているし、展示会用のキャッチコピーでの検索数も伸びている」という現象を目の当たりにしました。
月次推移を見ても、昨対比を見ても、これが顕著。
明らかに展示会効果だと、誰もが納得する結果が出たときには、次年度も「積極的に出展」という意思決定がなされました。
「表面」に見えることだけで判断をすると、誤った意思決定の罠にハマることが往々にしてあります。
WEBからの問い合わせだけで充分! と、展示会から全撤退したあとに、WEBからの問い合わせ数はあるものの、受注率が下がってしまうケースなどは、1例や2例どころではありません。
売上計上という「受注のタイミング」から顧客心理を逆算していき、どのような文脈で営業プロセスが組立てられていたか? 実績を出来うる限り分析した上での「戦術意思決定」が重要になります。
また、展示会で新規獲得はできていないけど、既存客との関係性や浮気防止策としての役割を担っているとしたら、そこも検証していく「仕掛け」を用意しておいた方がベストです。
以前、同様のご相談から始まったプロジェクトがありました。
その時は、「展示会は“新機能”や“新オプション”を発表する場にする」という方針が決まり、追加受注額で展示会効果を測定していく…という仕組みを動かしたことがあります。
効果は、明確に現れました
まず、日々の活動が変わりました。
今まで、事なかれ主義気味だった営業活動に、新機能や新オプションを毎年考え、製造部門とコミュニケーションを取る…という新しい文化が生まれました。
社内に雰囲気がよくなり、何故我々の仕事が必要なのか?という問いを日々考える環境が出来上がっていきました。
そして、「単なる展示会」という位置づけから「自分達の努力を問う場としての展示会」へとポジションが代わり、結果として売上が増加したという実績を残したこともあります。
日々の活動や展示会などの売上をあげるイベントを、これまで通りの思考で取り組めば、これまで通りの売上結果しか得られません。
新たな視点、別確度からの視点を持って取り組めば、これまでとは異なる売上結果が期待できます。
御社では、新たな視点を意図して取り込む「体制づくり」に、注意を払っていますでしょうか?