『お客様にヒアリングしたら、我々が自分達で強みだと思っていた部分とは違うところで評価されていました…』
先日、クライアント企業のプロジェクト会議にて、営業責任者の方がポツリと告白してくれました。
「なんだ、自社の強みも正しく把握していないのか…」と、思われますか?
でも、私の知る限り、かなりの確率で自社の強みを正しく認識している会社はありません。
「強み」という言葉が、あまりにも《軽すぎる単語》となってしまったために、軽視されたり、簡単に考えられたりしがちなのが、一つの原因だとも思いますが…
そもそも論として、《強み》と《顧客の評価》をセットで思考するプロセスがスッポリと抜け落ちていることに主因があると私は感じています。
少しわかりにくいので、事例を通じて具体的にイメージしてみましょう。
例えば、超硬度鋼をも簡単に打ち抜くドリルを製造販売していた企業は、丈夫な刃先加工技術が自社商品の《強み》だと思っていました。
それをウリにして営業をしており、売上もソコソコあげています。
しかし社長としては、こんな優れた技術力を結集したドリルがなんで他社商品に負けるのか?
と、歯がゆい思いをしていました。
よくよくあるケースです。
良い商品なのに、思うように売れないという現実は。
営業現場に聞くと『他者商品もかなり良くなってきて価格でコンペに負けてしまう。ウチは高いから売れないんだ』と…現状報告がありました。
確かにそれもあるでしょう。
しかし、まったく同じ商品であっても、売り方次第では「競合を簡単に蹴落とす事が出来たり、価格も“安いじゃないか!”と逆評価になるケースは、意外にもあったりするもの。
その競合を寄せ付けず、しかも“安い”と思われる“売り方“をどうやって見つけるか?
これが課題です。
その課題解決の一手段として、私は、顧客インタビューを実施することをよくオススメしています。
ちょっと取材イメージをしながら、ドリルメーカーの《強み》と《顧客の評価》をマッチングさせていくプロセスを見てみましょう。
『このドリルは、切りくず排出機能が抜群なんです』
(えっ?超硬度鋼を切削するのが“強み”のはずだが…)
切りくずを排出する機能が優れているということは、後工程が楽になるということなのですか?
『その通りです』
後工程で、どの程度の作業時間が削減されるのですか?
『だいたい5%位でしょうね』
5%ですか?! それはスゴイ。人件費換算するとどの位ですか?
『具体的には言えませんが、数千万単位ですよ』
すごいですね。では、このドリルを購入することで、数千万円のコストダウンが実現できたということなのでしょうか。
『あっ確かにそうですね…。その通りです』
ちなみに、切りクズ排出機能という点で、他社比較はされたことありますか?
『もちろんです。デモも見ましたが、御社製品がずば抜けていますよ』
このインタビューを通じて、同ドリルメーカーの《強み》は、他社よりも「切りくず排出機能」で《評価》されていることが分かりました。
しかも、数千万単位の人件費削減にも繋がるということは、価格競争には陥らないセールスが展開できることも判明されたわけです。
このインタビュー法は、トップセールスの人達が体得している「質問法」を駆使しないと、顧客の口からは引き出すことはできませんから、簡単にできるものではありません。
しかし、下手な鉄砲を打つ時間とコストを考えれば、しっかりと練り込んだ「営業の武器」を準備した方が得策です。
顧客が我が社を最も評価しているポイントを正しく知ることは、次なる顧客に打ち出すべき魅力を正しく知ることに繋がります。
つまり、正しく強みを知ることは、新規開拓力の向上と密接にリンクしているのです。
現実問題として、セールスの切り口と顧客の欲求がズレたままま放っておくのは、大きな損害に繋がります。
本来、顧客になり得る見込客を獲得できない「チャンスロス」が、その損害です。
これが1年続けば。
かりに2年、3年と続けば…。
損益計算書に計上できるであろう「売上高」は、未計上のまま経営され続けることになります。
強みを正しく認識して、強みを活かした営業活動を行うことは、最も投資コストが安く、確実かつ最短に売上をあげていくためのアプローチとなりますから、本気と向き合うことが大切です。
御社は、自社の強みを顧客目線で捉えていますか?
また、その切り口を鋭くしたセールスを展開していますか?