とことん「本質追求」コラム第206話 経営と営業をつなぐパイプづくりの重要性

 

「競合の比較表ですか? 今は用意していませんが、私の頭の中にすべて入っています。それに実際の営業では、競合と比較して失注しているケースは少なく、既存の文化や習慣を壊す事ができないのが、売れない理由なんです」

 

 

先日、藤冨のセミナーを聞いてくださった社長が、ウチの営業マンと面談してほしい…と言われ、ご訪問したときのことです。

 

3つほど商品ラインナップがあり、どれが売れそうか?と質問されました。

 

うち、2つは概念的には見た事も聞いたこともある商品。

もう1つは、しっかりと材料さえ整えれば、間違いなく売れる!!と直感の走った「見た事も聞いたこともない商品」でした。

 

その売れる商材は、企業秘密が満載なので、残念ながら本コラムで触れることは出来ません。

 

が、他の思うようには売れていない商品のヒアリングした時に覚えた強い違和感。そこから得られた「気づき」に《拡販のノウハウ》がくっきりと浮かびあがったので、今回はこれをお伝えしようと思い、キーボードを叩いています。

 

その「概念的には見た事も聞いたこともある商品」の説明を受けたときのことです。

 

どこにセリングポイントがあるのか?

誰にとって、どんな効用がありそうか?

 

を感じ取りながら、適宜質問をしていきました。

 

話を聞くと、確かに差別化されたポイントはいくつかありました。

そのポイントから考察すると「新しい販路開拓」もある程度は見えてきました。

 

ところが、決め手となる突破口を浮き彫りにするために「競合商品との比較表」があれば見せて頂けないか?

 

という問いに…

 

冒頭の「競合の比較表ですか? 今は用意していませんが、私の頭の中にすべて入っています…」 との回答がくる始末。

 

さらに追い打ちをかける言い訳(?)として、失注している主因は、競合の存在ではなく、既存の文化をぶち壊す事ができないというのが、営業現場での主張だったのです。

 

この話を聞いていて、思うように売れていない真意が見えました。

と同時に、営業現場での苦悩も透けて見えてきたのです。

 

そもそも、事業の方針というのは、経営陣が決定します。

その決定された方針に基づいて、営業部隊は「該当商品」を販売しなくてはなりません。

 

つまり、営業部隊は「自らが売りたい!と使命感に駆られて販売している商品ではなく、仕事だから売っているに過ぎない」という現実を大前提にして考える必要があると感じたのです。

 

誤解のないように言うと、その営業マンの方の熱意がなかったと行っている訳ではありません。

 

経営陣と営業部隊のパイプがしっかりと築かれないまま、販売が先行してしまっただけ…という印象です。

 

このパイプづくりは、事業を遂行するときのキモとなります。

 

どうゆうことか?

企業経営は、戦争論を代用してロジックが組まれることが多いので、これを戦争論で置き換えて見て行きたいと思います。

 

戦争論には、「戦略」と「戦術」があることは、皆様もご承知の通りです。

しかし、もう一つ大事な要素があります。

いえいえ、大事というよりは、戦争論において中核的な要素となるものです。
 それが「兵站(へいたん)」=「ロジスティクス」と呼ばれる概念です。

 

イスラエルの軍事学者であるマーチン・ファン・クレフェルト氏は、「戦争のプロは兵站を語り、戦争の素人は戦略を語る」と喝破するほどで、日本が大東亜戦争に負けたもの、この兵站の位置づけを甘くみていたとされています。

 

兵站とは、前線の戦闘部隊を支援する一連の体制づくりを言います。

兵士の移動から、食料や弾薬、武器の補充、または戦闘を有利に運ぶための情報作戦の遂行等を総括する単語です。

 

前線にいくら強靭で素晴らしい能力をもった部隊を揃えても、兵站がうまく計画なされていなければ、戦闘力だけでなく、士気まで低下していきます。

 

これを事業活動に置き換えて考えると、「売るためのあるべき体制づくり」が、くっきりと見えてきます。

 

経営陣が、なぜこの商品を売るのか? どのような大義名分があるのか?を前線に伝えることは、「なぜ私たちがこの商品を売るのか」という使命感が醸成され士気向上に繋がります。

 

そして、敵はだれで、どのような装備をしているのか? これらを事前に知らせることで覚悟が固まり、必要な準備を整えることが出来ます。

 

これを告げずに営業の現場に出せば、「思っていた敵と違う! こんなにバサバサ切られて痛い目にあっていては割に合わない!」と前線の戦力は一気に低下しまいます。

 

従って、営業マンが現場に行く前に「勝てる絵」を共有する必要があります

 

経営陣も前線の営業部隊も《共通した勝つイメージ》をもち、どのような武器(営業ツールや販促手法)が必要なのか? を充分に吟味し、最強のものを用意して、安心して戦える環境をつくっていくことが大切です。

 

 

そして、戦いの結果を正しく聞き取り調査し、劣勢であれば勝てる作戦を再考し、優勢であれば、さらに圧勝できる作戦を熟考する必要があります。

 

 

御社では、経営陣と営業部隊のパイプは強固に結ばれていますか?