「藤冨さんの見積もりって、めちゃくちゃ高かいですよね」
先日、独立起業前に勤めていた会社の営業マンから言われた一言。
13〜14年前に私が作成した見積もりを引っ張り出したときに、なぜ、このような構成になっているか? 不思議に思ったようです。
もちろん私は、見積に一切の水増しはしていません。
しっかりとサービスを提供するため、漏れなく顧客の要望を組み込み、さらにより良い提案をするために、必要な工数をキチンと計上していたに過ぎません。
にも関わらず「高い」という評価。
私は、常々思うのですが、皆さんそんなに自信がないのか? と逆に感じざるを得ません。
コラムで取り上げるくらいですから、今回の出来事は一例として感じたことではなく、様々な会社に出入りしている中で、時々感じる「違和感」でもあります。
そもそも、価格とは「価値をお金に置き換えたもの」です。
そして、その価値には、「絶対的な価値」と「相対的な価値」そして、「未来を形成する価値」があります。
「絶対的な価値」とは水は喉を潤すものと捉えるときのこと。
「相対的な価値」とは、お茶やジュースと比較したとき、どちらが効果的に喉を潤すか…と捉えるときのこと。
そして、私が着目すべきだと強く思っている「未来を形成する価値」とは、自社の顧客に、今よりもさらにベストな世界観を一緒に作っていく姿勢、努力、技術・ノウハウ蓄積など、未来に受け取る効用や利益のことを言います。
水で例えると、より良質なミネラルを含有している水源を発掘して、顧客の健康を増進させる ― などの取り組みにあたるでしょうか。
いずれにせよ、未来を形成する価値をも、必ず提供する。
この自信を裏付けるための努力とコミットメントが、企業をより強く成長していくものだと私は信じています。
そして、自社の成長に合わせて、その利益をお客様も享受できる。
これこそが本当のお客様満足に繋がると思う訳です。
事実、冒頭のサラリーマン時代に受注したお客様も、現在も良好な継続取引が続いているとのこと。
情報システムのサービス提供をしているのですが、年間1億円前後のサービス料を頂戴し続けています。
もし、価格をギリギリで提供し、疲弊しながらサービスを提供していたら、知らず知らずのウチに仕事に手を抜き、顧客との信頼関係にほころびが生じたかも知れません。
そのようなリスクを未然に防ぐ事も「未来を形成する価値」として捉えることも出来ます。
価格を高くすると、どこか後ろめたく感じるのが日本人の性質だとも言われています。
たしかに私自身も営業現場にいるときには、少なからず、そういう面はあります。
それでも「努力をしない言い訳を作るつもりか?」「どこまで最高品質を追求できるのか?」「そのためには、どの程度の労力、原価が発生するのか?」「お客様は、それをどのような価値として受け止めるだろうか?」を徹底して自問自答することで、「このチキン価格(ギリギリの価格)はやめよう!」と自らを奮い立たせていました。
立場が変わってコンサルタントとして活動するなか、クライアント企業さんにも、もっと大胆に値段をつけましょう!と提案することが多々あります。
時代が背中を押していて、さらに自社にしか提供できない強みがあるのであれば、必然的に「価格交渉力」は高まることもあります。
しかし、価格を引き上げる意味は、その追い風に乗るという意味合いより、未来を形成する価値を提供する!という強い意志を育むことに真の目的があります。
人生の教訓では「今を生きろ! 未来は“今”がつくり出す」と言われます。
これを営業に置き換えると、「未来をつくり出すのは、今の価格である」と言い換えることも出来ます。
ドラッカーも言いました。
利益とは、未来費用である ― と。
御社は、高飛車な価格設定を堂々とお客様に提示する覚悟を、社員全体に共有させていますか?