とことん「本質追求」コラム第153話 顧客が満足し、営業マンの士気もあがる重要な視点

 

「購入して良かった!私もあの商品ほしい! という評価を知覚させるのって、食品の場合どう実現させれば良いのでしょうか?」

 

先週、事業構想大学院大学の「高収益メーカーとして成功するプロジェクト研究」の無料説明会を開催したときの事です。

 

加工業、機器設計会社、部品メーカー、IT企業など、多岐にわたる請負型ビジネスの経営者や幹部の皆様がお集りになり、セミナー終了後にはたくさんのご質問を頂きました。

その中で、食品を扱う企業の方から冒頭のようなご質問を受けました。

 

当日は、時間も押していたので、表面的なお話しか出来なかったのですが、このご質問は極めて本質的かつ重要なことなので、改めてコラムに取り上げ、掘り下げてみたいと思います。

 

ご質問の背景は、セミナー中に「商品を拡販させるのに、お客様自身がその商品から受け取った効用を知覚化させると拡散力が強まります」という主旨のお話をしことがキッカケでした。

 

例えば、疲れが取れる…という効用は、極めて主観的ですし、何がどう影響して疲れが取れたのか、知覚が難しいと思います。

 

拙著「営業を設計する技術」において、エアウィーヴ社の「疲れが取れるマットレス」の事例を書きましたが、果たしてマットレスのお陰で疲れたが取れたのか、お風呂に入ったから疲れが取れたのか、軽い運動で疲れが取れたのか…一般人には明確に知覚することは難しいのが現実です。

 

そこで、エアウィーヴ社は、常に自分の身体と向き合い、何がどう影響したのか知覚できる人種 —— そう、アスリートから波及させて行こうと考え、体系だった販売戦略を組み立てました。

結果は、4年で30倍前後と驚異的な売上拡大を実現。
2010年に4億程度の売上が、翌年11億円と3倍近くまで急成長し、2012年には、53億円とさらに5倍近くまで飛躍し、2014年には120億円まで到達させたようです。

 

▼営業を設計する技術 (かんき出版、藤冨 雅則著)▼
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この戦略を冷静に分析すると「知覚」というキーワードを無視して通ることは出来ません。

 

知覚できない商品というのは、売り手が謳ったセールストーク(効用)を享受できなった…という印象を持たれます。

つまり、期待した利益を享受できなったという消費者を増やす事につながるので、リピートされないだけでなく、不平不満が広がる恐れがあります。

 

これは消費者から見た問題点ですが、一番の問題点は「営業マンが罪悪感をもったまま営業をし続けること」をも意味します。

 

この問題は深刻です。

 

思うように売上が伸びない…と言って、反響をとるために広告宣伝費にお金を突っ込んでも、最終的なクロージングで自信をもってセールスできなくなっているので、広告費をドブに捨てたも同然になってしまいます。

 

また、営業マンを増員したとしても古参社員が妙な入れ知恵をするから、新人セールスは、出鼻を挫かれてしまいます。

 

正すべきは、現象レベルのセールスではなく、「効用を知覚できるコンセプトの見直し」から営業の新しい切り口を発見したり、エアウィーヴ社のように、知覚できる市場を発見したり…と、商品や営業の戦略企画の見直しなのです。

 

顧客が効用を実感し、満足すればリピートに繋がりますし、口コミにも繋がります。メディアの拡散も期待できますし、なにより営業マンの士気も高まる、とても重要な視点なのです。

 

ちなみに、この知覚化される効用というのは、客観的である必要もあります。

 

例えば、冒頭のご質問のように食品においては「美味しい」「まずい」などと極めて主観的な声になりがちです。

 

人によって、美味しさの基準が違うのですから、どう美味しいのか、どうマズいのか、が分かれなければ伝わりません。

 

つまり、知覚化された情報というのは、客観的に感じることができないと「効用」として伝播しにくいのです。

 

食品を例に考えると

 

・舌がビリビリとしびれるほど辛いソース。(味覚)

・  ありえないほど大盛りの天丼(視覚)

・  強烈な異臭だけど、口に入れるとまろやかな旨味が広がるクサヤ(嗅覚)

 

などなど、美味しいという表現で市場の共感を得ようとするのではなく、五感で感じる情報にまで、磨き上げる必要があります。

 

伝播する媒体が、口コミに代表される「人」であったり、新聞・雑誌、TVなどの「メディア」だったり、自社で行う顧客インタビューなどの「販促ツール」であったりしますが、いずれも「その情報に触れた人が“感じる”」レベルにすることが大切です。

 

その環境が実現できれば「その商品を買ってみよう!」という動機づけが促されるからです。

 

また、知覚化させる最も効果的な方法は、「計測化」できる状態にもっていくことです。

 

これはBtoBの商品では、必ず織り込んでおきたいポイントです。

もちろん、BtoCの商品でも織り込めるのであれば、織り込んで置いた方が商品やサービスの波及力は高まります。

 

計測化できるということは、客観的情報の信憑性(しんぴょうせい)を高めますから、より強いメッセージ性をもつことになります。

 

食品であれば、「量」や「種類の豊富さ」「栄養価」など、様々な切り口で計測化できます。

ただし、栄養価は知覚できませんから、エアウィーヴ社のような販売プロセスにおける仕掛けか、使用アンケートなどを駆使して知覚化させるテクニックが必要ですが…

 

いずれにせよ、計測化できる切り口を持つと、比較検討しやすくなるので、顧客の選択基準も単純化されます。

 

選択基準が単純化されれば、迷いが少なくなりますから、コンバージョン率(購入率)が高まり、売上は増大していくのです。

 

御社では、誰にどのような知覚ができる効用を提案しているか…企業としてのセールス・メッセージまで落とし込んでいますでしょうか?