とことん「本質追求」コラム第146話 展示会の出展効果を高める「営業体制」のつくり方

「最近、展示会が費用倒れになっているんです。次回は見合わせた方が良いと思いますか?」

 

私が関与している会社の大半は、東京ビックサイトや幕張メッセなどで行われる様々な「展示会」に出展しています。そして、その多くは同じような悩みを抱えていらっしゃいます。

 

ふだん電話営業や飛込み、ダイレクトメールなどで、こちらから出向いていく「こんにちは営業」でしか商談が生まれないBtoBの企業にとっては、唯一「いらっしゃいませ営業」が出来る場です。

 

招かざる営業である「こんにちは営業」は、買い手の興味の有る無しに関係なく、相手の懐に飛び込んで否か無くてはなりません。

話をまともに聞いてくれる確率は低く、断られる確率は高い。

門前払いなどの撃沈が続くと、営業にこなれた人でもストレスを感じるものです。

 

ところが、何かしらの興味があって買い手から近づいてきてくれる「いらっしゃいませ営業」は、営業マンにとっての心理的負担は一気に軽減されます。

 

初対面におけるメンタルブロックを取る技術もいらなければ、キーマンをたぐっていく技術も不要です。

 

心理的負担も少なく、商談をつくっていく技術も軽減される。

展示会は、営業マンにとって「自然発生的」に商談が生まれる、願ってもいないチャンスとなる! ハズなのですが…

 

現実的は、多くの営業マンはその重要性を理解していません。

 

1回出展すれば、百万単位の費用が流出するばかりでなく、開催期間中はブースに営業マンが張り付かなければなりません。

 

・  出展費用

・  ブース装飾費用

・  搬入、搬出運賃

・  営業マンの内部コスト

・  展示会企画担当者の内部コスト

・  サンプリングや手土産の費用

・  チラシやカタログの制作・印刷費

 

さらには、地方であれば、出張旅費など多額の投資も必要です。

 

にも関わらず、展示会当日にブースに立ち寄った「見込客」の重み付けは意外にも理解されていません。

 

 

仮にトータルコストで300万円かかっていたとして、100名ブースに立ち寄ったら、見込客を1名発掘するコストは3万円という事になります。
1000名の名刺をかき集めても、見込客発掘コストは3千円です。

 

とても貴重な見込客のはずなのに…

 

「展示会って色んな人と話すから“誰とどんな話したっけ?”ってなっちゃうんです。勘違いしていたら恥ずかしいから、記憶が曖昧な人は追っかけもしないですね…」

 

と言う営業担当者が意外にも多いのが実情なのです。

社長が聞いたら、激怒ものハズ。

 

営業マンの個人的なメンツによって、商談のチャンスをみすみす見過ごしているのですから…。

 

商売によって異なりますが、単価の高い商売をされている企業であれば、1社の受注で、数百万、数千万円、億単位の機会ロスが生まれることになります。

単価の低い商売であっても継続取引のチャンスが失われれば、数百万単位の機会ロスとなります。

 

 

そのチャンスとリスクのバランスを考えると、何故「展示会」の営業体制を営業マン任せにしているのだろうか…と個人的には不思議に思うのです。

 

現に、関与先に訪問して、前回の展示会でブースに立ち寄った人に「DM」を打ちたい!と言っても、すぐに手配できる企業は、ほぼ皆無です。

 

 

展示会で集った名刺は、各営業マンに割り振られ、個人の名刺フォルダに放り込まれます。

ある人は、アイウエオ順で整理・収納され、ある人は、展示会やイベント毎に整理・収納されます。

 

名刺の整理・収納方法まで指示を出している管理者はいませんから、みんなバラバラであるのはアタリマエです。

 

従って、この間の展示会に来た人の名刺をもう一度集めようと思っても集るハズがないのです。

アイウエオ順に並べられた名刺フォルダから、展示会に来た人だけをピックアップすることなど出来ませんし、とりあえず全部の名刺をスキャニングするから、名刺フォルダ毎出してほしい!と言っても、大抵は拒絶されます。

 

町でバッタリ出会った学生時代の友人も入っているかも知れませんし、趣味のサークル仲間の名刺も紛れ混んでいるかも知れません。

 

いくら「名刺は会社の財産です」と言っても、会社での活動だけの名刺だけをピックアップするのは、意外にも回収は困難を極めるものなのです。

 

だからこそ、個人に割り振る前に、展示会に来場したすべての顧客をデータベース化する必要があります。

 

一斉メールが送信できるように「メールアドレス」も必要ですし、FAX同報通信をする可能性もありますから「FAX番号」も必要です。

 

ときどき、「新規顧客のアプローチリスト」はありますか?

と聞くと、胸をはって「あります!」と言われますが、実際に一斉メールやFAX同報通信をしようとすると、現実はFAX番号やメールアドレスまではデータベースに転記されていなかったりするケースがあります。

 

営業リストとは、想定されるアプローチのすべてにおいて、即実行可能な状態でなければ「リスト」とは呼ばないのです。

 

展示会の来場者フォローは、極めて重要です。

一過性のフォローではなく、一回接点をもった人に定期的に接触をはかれるようデータベース化と定期接触の仕組みづくりをしていくことは「展示会の出展効果」を最大化するための必須の視点です。

 

他にも、そもそも論としての「展示会の挑み方」「ブースの見せ方」「展示会フォローの仕組化(人員対応以外のゴール設計)」など、展示会の営業体制づくりにおいては数々の重要な抑えどころがあります。

 

一回では、とても書ききれません。

また、次回以降「展示会の出展効果を高めるノウハウ」順を追ってお伝えしていきたいと思います。

 

御社では、展示会出展における営業体制づくりに、思考を張り巡らせていますでしょうか?