「営業」と「マーケティング」は、どう違うのですか?
先日、講演を聴いてくれていた参加者の方から質問を受けました。
講義中も、そのテーマについてはお話していたのですが、どうも腑に落ちなかったようです。
と言うのも、私は学校の先生ではなく、実務家であると自覚をしているため、結果が出さえすれば良く、明確な定義分けにあまり興味がありませんでした。
そのため、表現も曖昧模糊としていたのでしょう。
だからと言って、言葉の定義を軽んじているわけではありません。
ただ単に、言葉遊びがキライで、実務と離れた議論には興味がないだけです。
言葉の定義自体は、思考の枠組みを決め、その範囲でアイディアのタネを見つけることも出来るため、とても重要だと考えています。
なので、今回のコラムは改めて言葉の定義に挑んでみたいと思います。
そもそも、私がお手伝いしている中小企業においては、マーケティング部として独立した組織を持っているケースはさほど多くありません。
では、マーケティングの機能が営業に組み込まれているか…というと、これもほぼ皆無。
中小企業の営業部では、マーケティングという概念が浸透していないがために、とても非効率的な活動に甘んじているケースが多く「もったいない…」と常日頃思っていました。
中小企業の営業部にマーケティングと言う重要な概念を組み込めば、企業はもっと活き活きと活躍できるハズです。
そのため拙著「営業を設計する技術」では、マーケティングの「マ」の字も使わずに、営業プロセスの中にマーケティングのエッセンス組み込んでいました。
ある意味、確信犯です。
私は、マーケティングが全社的な活動だとすると、営業部の役割は、マーケティングの主張を個別の顧客に翻訳する作業だと捉えています。
従って、営業部はマーケティングの役割を真摯捉え、その意図を理解する必要があります。
しかし、このマーケティングという言葉が曲者です。
なんだか様々な定義があるので、よく分かりません。
そこで中小企業の経営者や営業幹部またはマーケティングマネージャーが、自社の販売活動において「自らの事業を創造するために、思考しやすく、組織に落とし込みやすい定義」を作り込むことが大事だと思う訳です。
ご参考までに、藤冨が考えるマーケティングの定義を明文化してみます。
「顧客になりえる人(法人)が、驚き、喜び、歓迎するような新しい価値を創造し、それを対象市場にまんべんなく的確なコミュニケションを展開していく活動」
藤冨は、このようにマーケティングという活動を捉えています。
となると、マーケティングは、商品の企画・開発、製造、販売、広報など、多岐に渡る職種にその役割が求められます。
ドラッカー氏は、マーケティングの狙いを「顧客というものをよく理解し、製品が顧客にぴったりと合って、ひとりでに売れてしまうようにすること」と言いました。
現場感覚からすると、さすがに「ひとりでに…」は、現段階では理想的すぎますと感じていますが…。
将来的には。情報技術の革新で“あり得る”ことかも知れません。
が、現時点においては、営業マンが“顧客にぴったりとあうような使い方や利用法を翻訳活動する”必要性は、まだまだ多くの業界に残っています。
このように考えるとぼんやり「マーケティングと営業」のあるべき関係性が見えてきます。
ここからは極めて私的な見解になります。
私は、マーケティングは顧客をもっと理解することが大事であり、営業は、もっと大局と本質をみることのが大事だと考えます。
営業は、単にモノを販売をする人ではありません。
我が社の顧客は…
「なぜ弊社の商品を購入しているのか」
「どのような欲求を充足させているのだろうか」
「問題解決の範囲は、どこまで及んでいるのだろうか」
「どのような利益を享受しているのだろうか」
「どのようなリスクから身を守れているのだろうか」
と、実の姿を掌握する必要があります。
そして、もっも大切なことは、買わなかった人(法人)のその買わない理由です。
営業マン本人がこれを客観的に分析することは心理的に困難を極めますが、この情報の本質を突き詰めることができれば、企業の持続的成長に必要な企画のネタの宝庫となります。
営業の本当の仕事は、このような次なる販売活動に役立つナレッジを蓄積することです。
もし、この仕事を的確に行いセールスプロセスに落とし込めれば、営業における受注活動でさえも極めて作業的なものになるからです。
ところが、意外に思われるかも知れませんが、多くの営業現場において、この質問に的確に答えられる人は多くありません。
大抵の場合は、沈黙してしまうか、回答が出て来てもまだまだ視野狭窄であるケースが多いのが現実です。
もっと大局と本質を見て、もっと顧客の現実を掌握することが大切だと常日頃感じています。
そして、掌握した事実を、次なる顧客獲得の材料にするために「営業部内で情報共有」し、営業部全体を情報武装することで売上を組織的にあげていく必要も感じています。
また、その情報を営業部内にとどめることなく、商品のリニューアルや新商品の企画・開発、広報のあり方、販促のあり方に、フィードバックすることも重要だと考えています。
顧客の言葉尻に踊らされたり、自分の成績に有利な情報統制を行おうとすると、関連部署は、動いてくれません。
しつこいようですが、「大局」と「本質」で見る事が大切なのです。
そして、マーケティング側にも一つ注意しなけばならないことがあります。
マーケッターは、顧客が契約書にハンコを押したり、財布からお金を出す瞬間までの「心理的葛藤」を現場から学ばなければ、本当の顧客心理を掌握することは出来ません。
契約書にハンコを押すまでの、ドキドキ感溢れる心理戦を肌身で感じれば、もっと地に足の着いたマーケティングプランが草案できるはずです。
顧客は何かに関心を持ち、その関心を持続させたまま自らの身銭を切るわけです。
我が社が提供する商品の機能や性能を評価しているのではありません。
その機能や性能から得られる「利益」を受け取りたいだけなのです。
その利益と値段を天秤にかけたとき、どのような代替案よりも、我が社の提案の方が、優れていると思ったときに、購買プロセスはハッピーエンドで終結するのです。
そのために、商品の企画・開発のあり方は、的を得ているだろうか。
広報のあり方は、的を得ているだろうか。
販売促進のあり方は、的を得ているだろうか。
今一度、見直す必要があるのではないでしょうか?
御社の営業部隊は、マーケティング機能の役割を担っているでしょうか?
そして関連部著は、マーケティング視点を取り入れた活動をしていますでしょうか?
各々の部署が、一人よがりの活動をしていては、出戻りが多く発生してしまいます。
市場の現実を知ってからの修正作業は、ムダな投資を強いられますし、骨が折れます。
御社は、マーケティング機能の行き届いた組織運営体制に、本腰をいれるつもりは、ありませんか?
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