目次|営業を設計する技術
プロローグ ゼロから市場の勝者になる「市場開拓手順」
【視点1】頑張っても売れない時代の営業の仕組みづくり
- 営業マンの弱体化が始まっている
- 顧客から見た営業マンの役割が変わった。
【視点2】顧客を見るな!市場を見ろ
- 売上は人につけるな、組織につけろ
- 販売、営業に強い影響を及ぼす「社会的証明」の心理を活かせ
【視点3】シンプルな戦略が市場の突破口を開く
- 不良在庫が一掃した無線機器メーカー
- 事業の定義をいかに営業戦略に落とし込むか
大手ファミレスに狙いを定める
【視点4】下手な鉄砲、数を打っても当たらない
- 鶏卵農家K社に訪れた突然の危機業績が飛躍する起点を作る
- インパクトユーザーとの出会いで地域シェア100%を実現!
- 伝説がまた新たな伝説を生み出す
【視点5】自社特有のウリと市場の欲求をマッチさせる
- 戦略づくりは顧客心理から逆算せよ
- 切り口を変えて新しい市場を開拓したITベンチャー
【視点6】成功する市場の開拓手順とは
- 「狙う」「決める」「拡げる」の3つの戦略視点を展開する
戦略1 競争せずに売上が伸びる市場を「狙う」
【本章の狙い】競合不在の市場に焦点を当て新市場を作り出す
- 市場を絞って新規開拓を成功させた電子機器の評価装置メーカー
- 儲かる市場の目のつけどころ
【ステップ1】自社の優位性を明確にする
- 競争原理を意識しない事業は、自己満足で終わる
- 参入すべき市場を掌握する「参入市場分析」
- 潜在客の欲求を引き出したハウス食品
【ステップ2】その優位性を欲しがる市場に狙いを定める
- 知覚できない効用は「欲求」を刺激しない。
- 欲求に刺さる売り方で赤字を脱出した化粧品会社
【ステップ3】参入市場の売上規模を推定する
- 変化の激しい時代の調査方法
- お金を掛けなくても市場規模は推定できる
【ステップ4】利益の上がる市場か否かを見極める
- 同一商品でも市場が変われば得られる利益は雲泥の差
- 高利益市場への足掛かりを築いた調理加工機器メーカー
【ステップ5】誰も真似できない差別化で、参入障壁をつくる
商品の差別化は真似されるが、取引先の差別化は真似できない
- 「テスト商談」はマーケティング調査をカバーする
【ステップ6】市場を段階的に制覇し、事業を強くする
- ヨコ展開で市場を攻略するネジメーカー
【視点1】市場を制するものが、業界を制する
- 3年で売上高を13倍にした寝具メーカーの市場開拓法
- 市場心理を動かしたいなら「認識」を意識せよ
【視点2】市場心理を掌握し、強力な販売力を手に入れる
- 業界商品の普及度合いによって、売り方を変える!
- 購入者層の購買心理を掌握する
- 市場へ波及していくキッカケとなる購入者の特性とは
戦略2 狙った市場で強い影響力を及ぼす顧客を「決める」
【本章の狙い】購買心理を読み込み狙った見込客を着実に射止める
- 急がば回れ…狙い打ち営業で高確率受注を狙う
- 取引先が一流だと自社も一流になる
- 金持ちから流行るモノは息が長い
- 一流と取引すると企業力も必然的に上がる
【ステップ1】インパクトユーザーを受注する営業体制を設計する
- トップアスリートの間で話題をつくった競技用水着メーカー
- ピラミッドの上層部は、挑戦者気質の営業が対応する
- 受注以外にもインパクトユーザーの商談には重要な意味がある
【ステップ2】顧客がNOと言えない「大義名分」を身にまとう
- 難攻不落の市場を開拓した広告営業断られない商談テクニック
- 商品を売るな、大義を売れ!
【ステップ3】見込客の興味を釘付けにする営業シナリオ
- 悲願の受注を手中にした研修会社
- 受注確度を飛躍的に向上させる「4項目情報収集」
【ステップ4】トップを狙うな。2番手、3番手を狙え
- 営業に自信のない人にも効果的な市場開拓の手順
【ステップ5】狙った顧客にリーチ出来るアプローチ技術を設計する
- 確実に商談を獲得するアプローチの組み立て方
【ステップ6】受注成功率を極限まで高める
- 狙った受注の成功確率は、執着心に比例する
- 購入意思決定は「会議室」で決まる
- 提案書はココだけ抑えろ
【視点1】インパクトユーザーがインフルエンサーになるとき
- 顧客満足の方程式
戦略3 影響力ある販売実績を武器にして「拡げる」
【本章の狙い】波及戦略が成功する3つの条件
- ライバル会社と同じような販売戦略は採用するな
- ピラミッド上層部の顧客層を厚くせよ
- メディアへのアプローチ作戦
【ステップ1】強固な拡販体制を整える
- 営業体制の移行と市場へのメッセージ内容を変更する
【ステップ2】見込客接点の全体最適を徹底する
- 最強のセールスコンテンツを準備する
- 事例PRの具体的な書き方とは
【ステップ3】プッシュ戦略とプル戦略を使い分ける
- 最小コストで最大効果を実現するための思考法
- 拡散力の強いプル戦略を実践する
【ステップ4】自然と拡がるための営業プロセスを設計する
- 見込客の接触確率を上昇させる
【ステップ5】PDCAサイクルの本質を組織に定着させる
- ボトルネック解消プログラムを走らせる
【視点1】セールスメッセージは企業の品格を決める
- 全身全霊で切れ味の鋭いメッセージを作り込め
エピローグ 波及営業で事業を飛躍させよ!
【視点1】波及営業こそ、事業存続の最強の武器
- 波及営業の真の目的
- 主力市場が喪失した富士フイルムの復活DNA
- 市場創造力を身につける最初の一歩
- 事業を力強く飛躍させる新市場開拓
【視点2】真の事業繁栄のために
- 事業の定義と販売理念の一貫性を作る
- 永遠の課題に勝負する
- 再現性を求めて——おわりに
まえがき (間違いだらけの営業対策)
仕事柄さまざまな業界の経営者や営業管理職の方からご相談を頂きます。多くが「利益を出して、事業を力強く伸ばしたい」というものですが、具体的に話を突っ込んでいくと、大抵どこも似たような方法で業績をあげようとしています。
「営業マンのスキルを上げたいのですが、どんな教育をすればいいでしょうか?」 「販売代理店制度を作りたいのですが、どこから手をつければいいでしょうか?」 「営業マンの行動管理を厳格化するシステムを導入しようと思うのですが……」 「ホームページに力を入れて見込客発掘の仕組みを見直そうと思うのですが……」 「チラシやDMなどの反響を上げたいのですが、このチラシはどうでしょうか?」
ほんの10年前までは、効果的だった販売手法や営業スタイルが、急速に陳腐化するなか、いま多くの企業が「いかに売るか?」と、暗中模索をしている状態です。
しかし、こうした「手段」ばかりに目を向けているうちは、業績の飛躍は望めず、事業としての成長は実現できません。
営業マンのスキルアップや活動量にいくらメスを入れたところで、数字が多少あがることがあっても効果は限定的。しかも、カンフル剤を打ってから半年もすると、また元の業績に舞い戻ってしまうのが、大方のオチです。
そもそも非常に疑問なのが、どの企業でも売上の増大を狙って「商品を差別化しよう」と努力をしています。しかし、肝心要の「販売手法」においては、業績の良い会社の模倣をしたり、流行の販促手段を安易に取り入れたりしているケースが多い…。
「1営業マンのスキルが足りない」と言われれば、社員研修に出し、
「営業マンの活動量が絶対的に足りない」と言われれば、管理手法を強化する。
「ホームページから見込客をワンサカ集めている」という事例を聞けば、ホームページに莫大な費用を投資する。
断言します。こんな追随型の販売手法を取っている限り、コストばかりが増え、思い通りに事業を成長させていく事など到底不可能です。
競争している限り、売上の奪い合いとなり、コストの掛け合いとなります。多少の売上げアップがあったとしても、事業として成長するだけの「利益」の上昇は期待できません。
耳にタコができるほど言われていることですが、「戦わずして勝つ」ことのできる事業環境を整えることが、利益を獲得し成長し続ける最良の方策なのです。
そもそも戦略とは、並み居る競合会社と戦う中で、競争する前に有利な状態を作りだすことです。競争せずに勝てる土俵を作ったり、圧倒的に勝てる土俵にライバル会社を引きずり込んだりすることが、戦略の目指すべき道です。
事業を力強く成長させたければ、営業マンに商品を売らせるのではなく、営業戦略で成長させる「絵」を設計することが重要なのです。
「営業マンは不要です!」と言っているのではありません。現実的に事業を伸ばすには営業マンの存在は必要不可欠です。
私が申し上げたいのは、商品があればあとは営業マンが売るのが仕事であると、責任を放り投げてしまうことに問題があるのです。あくまでも「戦略」の上に、営業マンが乗ることが重要であると主張しているのです。
とくに会社として新たな成長分野を作り上げるために、新規事業を立ち上げたり、既存商品を新市場に売り込んだりする場合、今いる営業マンが積極的に「次なる事業の柱」を育てあげることは、まずありません。
営業マンが予算を抱え”必達”を意識していればいるほど、販売に慣れていない商品や売上や粗利を稼げない商品は販売しないからです。売りやすいもの、儲かるものを優先的に売るのは、冷静に考えれば当然のことなのです。
だからこそ、営業マンに売らせる前に、売りやすい環境、儲かりやすい環境づくりを行なった上で、営業マンにバトンをタッチすることが、事業を迅速かつ確実に立ち上げる最大のポイントとなるのです。
本書では、環境づくり――つまり「勝てる営業戦略のたて方」を、「波及営業法」と名付けました。波及営業法は、競争せずに勝てる市場を見つける方法から、迅速に新規開拓を進めるための具体的かつ実践的な営業戦略の組み立て方までを、設計する技術と言えます。 実際に営業戦略を組み立てる手順としては、 ①競争せずに売上が伸びる市場を「狙い」、 ②その市場で強い影響力を及ぼす顧客を「決め」、 ③その販売実績を武器に顧客を「拡げて」いく。 この3ステップを踏む事で、一滴の雫が、広い水面に波を作るがごとく、最小限の力で市場に波紋を広げるような仕掛けを作っていきます。
一つ一つのノウハウを噛み砕けば一見新しいノウハウはありません。しかし、どれも著しい成長を遂げた企業が体系として、実務に組み込み実践してきたノウハウです。決して机上の空論を書いた本でありません。
業界で一目置かれるような企業に成長した会社が、ゼロから事業化に成功するまでに実践してきた手順を解説した実務書です。実際、私のクライアントでは、早いところでは4ヶ月も立たずに、新規事業が既存事業の利益を抜き去りNO1商品に育ったり、在庫の山だった商品が、キレイさっぱり倉庫から消え去り、数年間の苦悩から開放されたりした企業も存在しています。
「優れた技術で作られた価値ある商品を、日本中に波及させていきたい」 「世の中をアッと驚かすような面白い商品を、多くの人に使ってもらいたい」 「革新の無い”よどんだ業界”に斬り込んで、業界地図を塗り替えたい」 右のような力強い企業家精神をもった経営者や営業管理職の方に、ぜひ本書をお読み頂きたい。
そして共感して頂いたら、組織の隅々まで戦略を浸透させるために、全営業マンにも、この 「設計する技術」を理解させて欲しいと思います。本書は、独自性の強い商品やサービスを持つ企業にとっては、たとえ小さな企業でも極めて高い確率で成功できる実戦的ノウハウと戦略の打ち手をお伝えしています。
しかし、現実的には営業マンを介して商品を販売している企業であれば、業界を問わずご参考になる点は多いと思います。どこにでもあるような競争の激しい商品であっても、「売り方」を変えたり、「売り先」を変えたりすれば、まったく新しい事業として捉えられます。
商品やサービスをどのように売っていけば大躍進に導けるのか?想像力が膨らみ、その道筋が見えてくるように、いくつかの業界の事例を本文中に散りばめています。
頭に汗をかき、身体に汗をかいて真剣勝負で事業に取り組めば、成功できないはずがありません。
さぁ、競争せず十分な利益が獲得できる市場に狙いを定め、その市場で強い影響力を及ぼす顧客を獲得し、着実に市場展開を成功させる、勝てる営業戦略=波及営業法の実際を公開致しましょう。本書が、あなたの事業強化のお役に立つことが出来れば、この上ない幸いです。
2014年2月 藤 冨 雅 則