「攻撃は最大の防御なり」
ボクシングやフルコンタクト空手などの格闘技を経験した方なら、この真意がお分かりかと思います。
実際の「打ち手」ではなく、<心の状態>での「攻撃性」が勝敗の分かれ目になるのです。
一見、「突き」や「蹴り」が出ている選手でも、打っているのか、打たされているのか…では、大きな違いがあります。
心の状態が強い選手は、わざと隙をつくり相手に打ち込ませ、相手に「物理的な隙」を作り出しています。
また、先制攻撃を仕掛けて、心理的な負担を与え「心の隙」を作り出したりもします。
戦術は、相手や自分のコンディションによって異なりますが、いずれにせよ「心」で勝っていないことには、勝利の道はひらけないのです。
これは、ビジネスの世界でも、まったく同じだと感じ入るときがあります。
長年、同じ事業を続けていると、市場の変化により業績が下降傾向に陥るケースがあります。
普及速度が早かった商品は、衰退傾向も同じように早く。
普及速度が遅かった商品は、衰退傾向も同じように遅いのが一般的な見方ですが…
いずれにせよ、成長期を終え成熟期に向かっている商品は、競合との競争環境が一定であると仮定すると、当然のごとく業績は下方傾向を辿っていくのが普通です。
「このままでも何とかなるのではないか…」
「別に新しいことをやらなくても、時代が変われば何とかなるさ」
「そのうち業績は復活するよ」
こういった「保守的な楽観主義者」の現状維持発想が、知らず知らずのウチに衰退へと引きずり込んでしまっているのです。
よく「保守的な楽観主義者」と「根拠のない自信をもっている人」を混同されている人がいますが、この両者は似て非なる者です。
「根拠のない自信」とは、「現状を正しく認識する力を持ち、目標に向かって努力をし、結果を出して来た自分自身(企業文化)への信頼感」が源泉となっています。
つまりチャンスや危機といった「現状」を捉える力と、そこから“あるべき姿”へと自己革新をすすめていけるという「自己信頼感」が、「根拠のない自信」へとつながり、未知なる課題を克服し、未開の目標を達成させていくのです。
勝ちグセのついていない組織は、どんなに小さな事でも良いので「成功体験」を経験させ企業文化に「根拠のない自信」を擦り込む必要性があるのです。
そのためには…まずは、正しく現状を認識する必要があります。
しかし、これも“言うは易く行うは難し”。
現状を正しく認識する最大の敵は「欲」と「恐怖」の存在です。
とくに「恐怖」の存在は要注意です。
人間は、恐怖を意識的、無意識的に感じると、都合の良いように解釈してしまうものです。
これを心理学では「再定義」と呼びます。
自分の望ましい姿に事実を歪曲するこの心理状態。
これが、事実を正しく認識することを邪魔する最大の敵となっているのです。
「現実に差し迫った危機」など事実を正しく掌握せずにいれば、心の状態は、現状維持や防御の姿勢に凝り固まります。
しかし、事実を正しく捉える“工夫”さえ施せば、如何に現状をより良くすべきか…の方向性は、意外にもスムーズに導き出せるものです。
戦略づくりの第一歩は、正しい現状把握と攻撃は最大の防御なりの心構え。
この環境づくりが、「成長への源泉」であると、最近つくづく実感しています。