とことん「本質追求」コラム第574話 マーケティングと営業の相違点

 

「最近、マーケティングの話が多いですね!マーケティングと営業の相違点ってなんでしょうか?」

クライアント企業の社長さんと一献傾けた際、先週のコラムネタが酒の肴になりました。

完結にお答えしたら「なるほど!鮮明にイメージできました!」と感激してもらったので、読者の皆様にも共有したいと思います。

結論から言うとマーケティングと営業の最も大きな相違点は大きく分けて2つあります。

一つ目が業務範囲
二つ目が対象です。

まずは、一つ目の業務範囲について解説しましょう。

マーケティングの業務範囲は広範囲な活動をカバーしています。
商品企画・市場調査から製品開発の監修、広報・PR活動、営業支援まで、戦略立案から実施までの幅広い領域にわたる活動の責務を担います。

藤冨が23歳の時に修行をさせてもらったマーケティング・コンサルティング会社では、その広い業務範囲の中でも、川上業務の商品企画・市場調査を得意分野としていました。

同社では「消費者にとって価値あるものを生み出すこと」をミッションに掲げ、55年にわたり国内の名だたる製造業が参加するセミナーを開催し続けてきました。

その甲斐あってか、大手企業にはマーケティングに対する正しい認識は広がったように感じます。
しかし、99.7%を占める中小企業を中心とした世の中の常識は、まだまだ「マーケティング=売ること」と認識しているところが多いのが実情です。

その原因は、ネットマーケティングという言葉が生まれた20年ほど前から、書籍やセミナーなどで「マーケティングとは、どうやって売るか?」を目的とした情報発信が主流になったためだと、藤冨は感じています。

この認識が広く深く世の中に浸透すればするほど、非常にもったいない現象が起き始めます。

技術や独自の強みをもつ企業が、価値ある商品・サービスを生み出すマーケティング技術を知らないばかりに、売れない商品を量産してしまうからです。

売れない商品を、力づくで売ることは、決してマーケティング力や営業力が強いとは言いません。
下手をすれば、詐欺行為と後ろ指をされることにもなります。

個人がメディアと同等の力を持つほど情報発信力を得た今、消費者の期待を裏切る行為は致命的なブランドの棄損につながる可能性があるからです。

逆に真のマーケティングを知り、業務範囲を広く定義し、正しいマーケティング活動を行えば、間違いなく持続的な成長をもたらしてくれます。

もし、あなたの組織が、マーケティングを「どうやって売るか?」にフォーカスをされていたら、それは組織にマーケティング機能が働いていない可能性が大きいです。

本質的には、川上(企画)から川下(販売)までの一連の業務範囲を実行・監修をすることで、マーケティングは初めて機能し始めるからです。

投資家のウォーレン・バフェット氏は「企業家は、明けても暮れても、顧客を喜ばせたいと心から願う必要があります。私はたくさんの企業を見てきましたが、顧客を喜ばせて成功しなかった企業は一つも見たことがありません。」と発言しています。

つまり、顧客が喜ぶ価値あるものを生み出し続け、それを消費者に的確に伝え、満足を得てもらうための、一連の活動を愚直に実施した企業は、成功のスタートラインに立てる!ということです。

マーケティングを正しく実行できる組織にすることは、成功の必要条件なのです。

一方で、営業の業務範囲はより具体的で個別対応な部分となります。

営業担当者は特定の顧客に対して接触し、商品やサービスに関する個別の提案や価格交渉、契約締結など、直接的な売り込み活動を行います。

つまり、今あるものを目の前にいる相手に売るのが、営業の仕事なのです。

マーケティングの枠組みの中で、部分最適を行うのが営業の責務だともいえます。

マーケティングの業務範囲が、お客様の満足に関わる全ての事業活動に対し、営業の業務範囲は、目の前のお客に販売することや顧客の生の声を拾い、組織にフィードバックする機能に留まります。
上記の通り、業務範囲がマーケティングと営業の最も大きな相違点だとご理解ください。

次に、二つ目の対象を解説します。

マーケティングの対象は、ターゲット層となる市場に向けてコミュニケーションを行います。

広告やプロモーションなどを通じて、自社商品•サービスを想定客に知ってもらい、興味•関心を引き出すことを目指します。

顧客ニーズやウォンツ(欲求)は、定性調査などを通じて『探り』を入れますが、それが販売に結びつくかは確信が持てない状態です。

手探りな状態で、潜在顧客の欲望や欲求を手繰り寄せていきます。
マーケティングは、どうやって(How)市場(対象)を作り上げるか…を命題にしているのです。

しかし、営業の場合は異なります。営業は1対1のコミュニケーションに重点を置いています。個々の顧客と直接対話し、顧客のニーズや要望を理解し、商品やサービスを個別に提案・説明することで、契約締結に導くことが目的です。
つまり、営業は誰に(Who)に売り込むか…を命題にしているのです。

マーケティングの責任範囲が「売上高」だとすると、どの市場を狙うか?がカギを握ります。

一方で営業の責任範囲も「売上高」になりますが、市場ではなく、どうやって見込客を掘り起こし、商談を展開し、最終的に成約に結びつけるかがカギを握ります。

異なる業務範囲をもち、仕事の対象もそれぞれですが、つまるところ目的は一緒です。
それぞれが異なる視座を持ちつつも、連携し合うことで、企業の成長と顧客満足度の向上に寄与していく必要があるのです。

御社は、マーケティング部門や機能を組織に導入していますでしょうか?また、適切な業務範囲を与えていますでしょうか?