「ウチの事業も、そろそろ引き際かもしれません。次なる新規事業を模索していますが、体力的にも精神的にもどこまでやれるか…不安ばかりが募ります」
先日、相談に乗った経営者が、先行き見えない症候群になってしまい、半ば諦めモードになっていました。
詳しく話を聞き、事業を俯瞰して見つめると、同社長がいう通り「商品ライフサイクルの衰退期」に突入。
事業環境的には、非常に厳しい状況でした。
時代の流れには、抗えません。
車や電車、飛行機などの移動手段がアタリマエになっている時代に、馬車は2度と移動手段には逆戻りしないのと一緒で、消費者の習慣や行動様式が変化に根ざした消費は、進化することはあっても、退化することはありません。
いわゆる「慣性の法則」が働いた事業領域は、潔い決断が必要です。
安直に「撤退」を勧めているわけではありません。
競合が全ていなくなった状態で、1社だけ生き残れば、市場を占有し利益を出すことができます。
生き残れれば…という前提条件がある通り、事業と心中する覚悟が必要ですが…
逆境において、最もリスクが高いのは「生き残る自信」を失うことです。
新規事業に賭けるにせよ。
これまでの事業を何としてでも継続するにせよ。
「生き残る自信」を保ち続けることが必要です。
但し、ここで言う「生き残る自信」とは精神的な「自信」ではありません。
厳しい現実を見つめると、一企業が生き残ろうが無くなろうが、社会は困りません。
必ず代替案が存在しますから、消費者は、そっちを選べば良いだけの話だからです。
これは、個人でも企業でも一緒。
社会から必要とされるのは、貢献心なのです。
貢献心に根ざした「自信」こそが、幸運の女神を振り向かせるのです。
つまり「こんなベネフィットを社会に提供したら、支持されるに違いない!」と言う人間の欲求を充足させる貢献心が、売上・利益に転換されるわけですから、人間の欲求や習性、社会から受ける影響やその心理など、人間や人間の活動に対しての「好奇心」が、事業の活路を見いだす「出発点」となるのです。
藤冨のセミナーやコンサルティングを受けたことがある人は、耳にタコができるかもしれませんが…
お客様が商品やサービスそのものを購入しているのではありません。
お客様が得られる「ベネフィット」を購入しているのです。
商品企画部門は、ベネフィットを開発し、マーケティング部門は、ベネフィットを訴求し、営業部門は、目の前のお客様が、そのベネフィットでどうお客様の生活が変わるのか?を提案することで、商売が成り立っているのです。
表面的には、商品を開発し、商品を販売しているように見えますが、真相はもっと奥深く「ベネフィットから得られるお客様の満足」が、商売を支えてくれているのです。
そう考えると、自社の主力事業が「ライフサイクルの衰退期」に突入したと言う現実は、商品やサービスが売れなくなったのではないことに気づかされるはずです。
お客様がいなくなったのではない。
お客様が求めるものが、変化しただけです。
事業における逆境の本質は、顧客満足の変化なのです。
そこに着眼すれば、またお客様から支持をされる事業体へと生まれ変わることができるようになるのです。
そのために必要なことが「お客様の求めること」…
BtoCなら、人間そのもの
BtoBなら、企業経営
における「好奇心」こそが、事業推進の原動力となるのです。
人間は窮地に追い込まれると、ベクトルが自分に向きがちになってしまいます。
「このままではマズい。平穏は日々が脅かされる…」と。
しかし、窮地になった時こそ、ベクトルは外に向けなければなりません。
「我々を支持してくれたお客様は、何を求めていたのだろうか」
「お客様は、我々の商品・サービスを購入せず、どこにスイッチしたのだろうか?」
「そこでお客様は何に満足をしているのだろうか? 不満や不便、不自由などは生じていないだろうか?」
・今の時代の人が感じる満足
・今の時代の人が抱える“不”の要素(不便、不満、不自由など)
・商品サービスが顧客に与えるベネフィット と顧客生活の変化(企業活動の変化)
その上で、我々の経験や技術を持って、さらに別の満足を提供できないだろうか…
この好奇心が、事業を次のステージへと昇華されてくれるのです。
「好奇心」や「探究心」を駆り立てることができれば、どのような逆境であれ、楽しんで立ち向かうことができます。
そして、好奇心から発掘した「的確なベネフィット」は、逆境であろうとなかろうと、着実に事業を発展させてくれます。
御社の顧客ベネフィットを軸にした事業推進を心掛けていますか?