「原材料や物流費を価格に転嫁しにくくて… この円安が続くと利益が吹き飛びますよ」
先日開催されたコンサルEXPOでご相談を受けた時事的なテーマ。
「円安」が続くのか。
それとも「円高」に振れるのか。
正直言って、誰も予想はできません。
なぜなら、相場は「個人の意志」によって、変動するものだからです。
何を言っているんだ?
「金利や貿易など様々な要素にとって変動するものでしょ?」と思われる方もいると思います。
はい、その通りだと思います。
私は専門家ではありませんが、様々な要素によって、為替相場は動くことくらいは認識しています。
と同時に、ある一定の条件においてですが、個人の意思で為替が暴落した歴史も知っています。
著名な投資家であるジョージソロスが1992年にイギリスに仕掛けた徹底的なポンド空売り事件です。
戦略実行中のジョージソロスは、何を考えているのか。
どのような手を打ってくるのか。
周りがわかるはずもありません。
株式にしろ、現物にしろ、為替にしろ、ファンドマネージャーを含めた個人の意思によって、相場は大きく動かされるのは揺るぎない事実です。
コロナによって、世界のビリオネアが初めて3000人を超え、彼らの総資産は10兆ドル(約1100兆円)まで膨れ上がったとも言われています。
日本の国家予算の10倍です。
超富裕層、富裕層を中心に、大量の資金が「次なる獲物」を探して彷徨っている中、日本がかつてのイギリスのように標的にされる可能性はゼロではありません。
ロシアvsウクライナ戦争に突入する前、マスコミはこぞって「ロシアはウクライナに侵攻しないだろう」という空気感を醸成してきました。
しかし現実は「プーチンの意思」によって、ひっくり返されました。
何が起こるかわからない時代。
悲観的になる必要はありませんが、現実から目を逸らさないことは大切です。
最悪を想定して、最善を尽くすしかありません。
ちなみに、私はあまり「テレビ」を見る習慣がないので、確信は持ってませんが、マスメディアや”何とか大学”などのチャンネルで人気YouTuberたちが「悪い円安」と盛んに言っていて、その空気感に世の中が蔓延しているような気がしています。
彼がどんな論理を組み立てているのか?
私も気になって見てみましたが、彼らの言っている「良い円安」と「悪い円安」の違いがよく理解できません。
確かに、国民の年収は20年前と比較すると100万円も下がっています。
これは、平均値だけでなく、中央値も最頻値もいずれも下がっています。
日本人全体が貧乏になっている。という事は、厚生労働省の統計にもはっきり現れています。
※所得金額階級別 相対度数分布より ======================
1999年 中央値 544万円 / 最頻値 300−400万円 / 平均所得 665万円
2019年 中央値 437万円 / 最頻値 200−300万円 / 平均所得 552万円
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食品やエネルギーなどの自給率も著しく下がっています。
生活の基盤を輸入品に頼っている中、所得は減っているのに、生活費が上がれば、そりゃ国民の生活が苦しくなります。
「悪い円安」
確かに「生活」という視点から見れば、悪いと言えば、悪いかも知れません。
しかし、「生活」というのは、「仕事」から得られる収入から成り立っていることを思い出せば、見え方が少し異なってきます。
「仕事」=「産業」という視点から見れば、「円安」は逆にチャンスだと感じるからです。
そもそも、国力をあげるには「外貨」を獲得しなければなりません。
第二次世界大戦で焼け野原になった日本を救ったのは、自動車や家電などの輸出産業が、日本製品を海外に売りまくって「外貨」を獲得したためです。
また、かつて個人であるジョージソロスに、国家であるイギリスが敗北させられた後、イギリスは長期低迷から脱出することができた歴史が残されています。
暴落したポンドを武器に「イギリスの輸出業」が息を吹き返したためです。
この歴史を振り返ると、ものづくり大国「ニッポン」は、今こそ「外貨獲得のための戦闘態勢」につくべきだと分かります。
まず第一に、取引先からの要求に基づく「ものづくり」から脱却する必要があります。
自らの問題意識の上に、自らの解決策を持って、世の中に必要とされている「もの」を作り出すことです。
「こんな商品があったら良いのに!」
「こんな部品を組み込むべきだ!」
「この商品は、こんな形状で加工すべきだ!」
と最終商品のみならず、部品産業や加工産業も、頭脳戦を展開する準備が必要です。
得意先の要望や要求にシッポをふる姿勢を改めて、もっと「こうあるべきだ」というプロ意識を持つことが大事。
部品製造であれ、加工業であれ、それは実現できます。
そして、第二に「自らの製品を自らで売る力」を手に入れることも大切になっていきます。
国内販売であっても、売り先によって、テレアポが効果的か、DMが良いのか、WEBサイトから誘導が良いのか、全く異なってきます。
シルバー世代に売るなら、WEBサイトの誘導よりも、新聞広告やDMの方が良いかも知れません。
商品と売り先によって、最適な営業のあり方は、変わってきます。
自ら「売れる商品」を企画し、どこの誰に売れば良いか攻める「市場」を決定し、その市場の性質に適した「売り方」をトータルコーディネートしていくこと。
このセンスが土台となって、海外マーケットにも売り込むことができ、結果的に外貨を獲得するし「円高誘導」の一助になることができていきます。
本来であれば、政府系機関が、戦略的に輸出支援をしたり、プラットフォームの確立に予算配分すべきですが、それが見越せるまでは、個別企業の自助努力が大事。
今は、世界的な流通インフラ基盤を持つ「Amazon」が、「グローバルセリング(海外販売)」という仕組みを作り上げ、誰でも簡単に、流通経路を開拓することができます。
国内で「売るセンス」を身につけたら、次は海外。
母国語で「売るセンス」を身につけられなかったら、意図した戦略で海外販路の獲得するなんて
御社も、「悪い円安」を武器にして、日本復活の一助になることを目指してみませんか?