とことん「本質追求」コラム第510話 有事の際のマインドセット

 

「もし、戦争が起きたら”経済環境”はどうなるのですかね? 今から対策を施しておいた方がよいですよね?」

 

先日、クライアント企業の社長とランチを一緒に取りながら、今頻繁にニュースに取り上げられているウクライナ問題についての話になりました。

 

ウクライナ問題は、端的に言えば、ロシアと米国を主導したNATO(北大西洋条約機構)との牽制球の投げ合い。

 

藤冨も強く関心を持っていますが、戦争になった時のことまでは、誰にも予測は出来ません。

「こうなるから、こうしましょう!」とは、今の段階では、想像すらつきません。

 

しかしだからと言って、無関心で良いのか? と言うと、それはまた別の話。

経営者は、最悪を想定して、最善の行動を取ることを求められるので、想定できるシナリオはある程度おさえておく必要があると藤冨は考えています。

 

個人的な最悪のシナリオは、日本も戦争に巻き込まれることです。

プーチンが中国と二国間同盟を結び、米国に対して「売られた喧嘩は買ってやろうじゃないか!」と強気な姿勢を取ったら、十分に考えられるシナリオです。

 

その最悪のシナリオの前提は、決して大袈裟な話ではありません。

 

藤冨は、先週の天皇誕生日に靖国神社に参拝に行ってきました。

その足で、敷地内にある「遊就館」に行って、改めて「大東亜戦争(第二次世界大戦)」のキッカケとなった出来事に触れてきました。

 

当時の日本は、石油や鉄、産業用機器などの9割を輸入に頼っていたそうです。

と言うことは、輸入が途絶えたら死活問題につながります。

そこで、西欧列強の植民地となっていたアジア諸国を独立開放させ「資源」の輸入ルートを牛耳らせない防衛策を日本は取る必要があります。

 

その対抗策を実行していた日本に対して、米国は「鉄」と「資源」の輸入制限を行なったのです。

 

靖国神社の資料によると、当時の鉄の輸入量は3億6500万円(現在価値だと15億程度)の69.9%を米国から輸入していました。

石油も同等の輸入金額で76.7%も米国からの輸入に依存していたのです。

 

当時その輸入が途絶えたら、日本の経済は間違いなくマヒしていました。

そのような状況下「アジア圏から手を引かないと鉄も石油も売らないよ」と米国は宣言したのです。

これに反発した日本が行った行為が、かの有名な「真珠湾攻撃」です。

 

これを今起きているロシアに当てはめて考えてください。

 

ウクライナから手を引かないと、「貿易ストップ」や「SWIFT(銀行間国際決済システム)利用停止」をするよ、と米国をはじめとした欧州各国、そして日本までもが、ロシアにプレッシャーをかけているのです。

 

そもそも論として、これはロシアから見たら、極めて心外極まりないことです。

 

ベルリンの壁が崩壊したドイツ統一の際…

米国務長官がロシア(旧ソ連)に対して「統一ドイツがNATOの加盟国としてとどまれるなら、NATOの今の軍事的、法的範囲が東方に1インチたりとも広げない」と述べたとの記録が残っているとのこと。

 

つまり、NATO軍をウクライナに入れるような画策はしない!と言っているのに、当時16カ国(12カ国?)だった、NATO加盟国を30カ国まで拡大。

 

そのプレッシャーだけでなく、「当方に1インチも拡大しない」にもかかわらず、いけしゃあしゃあと、ウクライナをNATO加盟国に推進しようとしているのです。

 

これはロシア側から見れば、約束を破られただけでなく、軍事的な脅威以外の何者でもない状況です。

 

「ウクライナをNATOに加盟させない」と約束をしたのに、「そんな文書残ってないやろ!」と開き直った挙句、ロシア経済に大打撃を与える作戦に出た米国、欧州に対して、ロシアが徹底抗戦をするならば…

 

「勝ち戦」を目指すために、中国と手を組まざるを得なくなる可能性は極めて高くなります。

 

ロシアと中国の利害が一致し、NATOに対して宣戦布告をした場合…

 

米軍基地のある日本国は潰しておかないと、地政学的に中国、ロシアの脅威になるわけですから、戦略的に日本を略奪しないといけなくなるわけです。

 

大東亜戦争時に、本土決戦に持ち込もうとした米国が「硫黄島」や「沖縄」を略奪した作戦と同じように…。

 

やめてくれー。

と叫びたくなるような「状況」が、ゼロではなくなってきているわけです。

 

そうならないことを願うばかりですが、あらゆる前提条件が、大東亜戦争の時とかぶってきているのが現状です。

 

経営者としては、複数のシナリオをある程度は想定しておく必要が出てきました。

 

最悪のシナリオでなくても、コロナで疲弊した世界経済に上書きされるこの問題は、私たち日本にとっても対岸の火事にはならないことは明白です。

 

少なくとも、原油高、インフレのさらなる助長、株価・通貨・債権の暴落…が自社に与える影響を正しく捉え、今のうちから対策を講じておく必要があるでしょう。

 

先日、2月17日にコラム500号記念にご参加頂きました皆様にはお伝えしていますが、全て「相対価値」で捉えておくと間違いはありません。

相対するものは何か?

この見極めが大事です。

 

いずれにせよ、このような大きな環境変化は、私たち庶民は受け入れざるを得ません。

どうなろうと、庶民の力ではどうすることもできないでしょう。

 

それでも、私たちは商売を続け、生き残っていかなくてはなりません。

 

本業の商売においては、コロナ騒動と同様に、一時的に好影響を受ける業種、打撃を受ける業種は様々でしょう。

しかし、雨が続く日はありませんし、朝の来ない夜はありません。

必ず、好転する時期がきます!

 

その勝負をするタイミングになった時に、全力でアクセルを踏めるように、経営の根幹を磨いておく必要がある…。

 

その経営の根幹とは何か?

 

我が社が、いま社会に提供できる価値は何か?

 

真摯に”今”と向き合い、提供できるものに全力を注ぐことしかないでしょう。

 

藤冨の専門である「営業」という世界を「売上至上主義者」の集まりだと感じる方は、未だ多いと思います。

しかし、藤冨が捉える営業とは「利己と利他の二分法を解消する事業を行うこと」にあります。

この概念は、マズロー の「完全なる経営」に書かれていた自己実現の定義と一緒です。

 

儲け主義ではなく、優れた価値を提供すること。

また、利益は次なる価値を創造する源泉と捉えること。

 

まさに企業における自己実現の世界観です。

 

御社は、企業、社員共に、自己実現を目指して、今という日々を生き抜いていますでしょうか?