「ブロックチェーンのセミナーを聞いて、時代が大きく変わる!と言う意味がようやく理解できました。当社のビジネスにも影響してくるのですかね?」
先週木曜日(2月17日)に実施した「コラム500号記念セミナー」に参加された方からのご質問です。
個別回答は、公開できませんが、個別回答の根底にある「ブロックチェーンが与える事業環境の変化」については、どうしてもお伝えしたいと思い、コラムに転載しました。
少し長文になりますが、次世代を感じるヒントになると思いますので、ぜひお読みください。
藤冨はブロックチェーンが事業環境に与える影響は大きく分けて3つあると感じています。
- 資金調達のあり方
- 消費者の購買心理や行動のあり方
- 有能な働き手とのパートナーシップのあり方
この3つです。
つまり、事業活動の大きな幹となる全てに影響を与えてくることは間違いないと認識しています。
となると、必然的に藤冨の専門である「営業戦略を策定」にも影響していきます。
どうゆうことかというと、戦略策定は「誰にどのような製品・サービスを提供していくのか?」という大命題を掲げることからスタートします。
商品をゼロから開発するにせよ、既存商品をリニューアルするにせよ、新販路を開拓するにせよ、既存商品を既存市場に徹底浸透させるにせよ、いずれも、「資金」と「人」の制約が存在しています。
その制約条件が変われば、自ずと戦略策定も変わっていきます。
これまでは自己資金か、銀行、または株式公開などをして直接市場から資金を調達して、事業活動を行っていました。
大量に資金があれば、大量の営業マンを雇って、人海戦術をかけることもできますし、テレビCMなどに投下して認知度を上げることも可能です。
しかし、資金が限られている場合、その範囲の中でしか、営業活動を展開できません。
資金によって、選択できる「拡販作戦」が変わるわけです。
また、人材の質も影響していきます。
卸売企業などを仲介していて販売していたチャネル政策を見直し、直販にしたい。
でも、直販の成否のカギを握る「ネット通販」の仕組みを構想、企画、設計、運営できる人材がいない…
となれば、戦略自体を考え直さざる得ない時もあるわけです。
経営資源(人、金、モノ)と外部環境が変わるのですから、ブロックチェーンを脇に置いておくわけにはいきません。
それぞれが、どのように変化していくのか?
概略とキーワードだけでも抑えておきたいと思います。
- 資金調達のあり方
2006年までは、株式会社を設立するのに1000万円が必要でした。それが撤廃され1円になりましたが…。それでも自己資金がなければ、事業活動はできません。
しかし、今の時代は極論を言うと、ネットにつながるスマホさえあれば、自己資金ゼロでも事業ができます。
クラウドファンディングを使って、商品の試作段階から販売が開始できる環境が整っているからです。
クラウドファンディングは、ブロックチェーンが台頭する前からありましたが、これからはもっと大きな波が来る可能性が出てきました。
DAOという存在です。
2022年1月8日の日経新聞に取り上げられた記事を抜粋しますので、ご覧ください。
■DAOが多額の資金調達========================
21年11月、米ニューヨークで開かれた米合衆国憲法の原本のオークションである応札者が注目された。富裕層でも企業でもない、仮想通貨イーサリアムの支持者で構成する組織だ。支持者から集めた4700万ドル相当(約54億円)の資金を武器に参戦した。競り負けたものの、仮想通貨のファンだけでまとまった資金を集めることができたイベントとして大きく話題を集めた。
組織の名前は「ConstitutionDAO」。「自律分散型組織(DAO)」の1つで、企業や組織のように代表者がおらず、メンバー同士で自主的に運営されるのが特徴だ。管理者が不在だが、改ざんされず透明性の高いブロックチェーンを使ってお互いを監視し信用力を担保する。
DAOが普及すればビジネスは大きく変わる。これまでは企業などは信用力を使って様々なビジネスを広げてきた。DAOであれば、信用力が足りないとみなされてきた個人レベルでも資金を集め、活動が可能になる。
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上記の記事が示唆しているのは、自己資金、銀行からの借入、株式公開や社債など直接金融からの調達といった、これまでの常識を覆すスキームが既に世に出てきた、ということです。
しかも、DAOは投資だけでなく、社長不在の超合理的な会社運営の可能性まで秘めています。
戦略遂行の合理性は、権力によって失われることがありますが、これがなくなれば、有能な働き手は、そちらに移動するでしょう。
社長が人間でない組織? 極端な見方ですが、中間的な捉え直しをしてくる企業は出てくるかも知れません。
見逃せない動きです。
- 消費者の購買心理や行動のあり方
パソコン、スマホ、ネットの登場によって、購買行動が大きく変わりました。
Amazon、楽天での買い物が日常になった人も多いと思います。
BtoCだけでなく、BtoBもネットの影響を受けました。
例えば以前は、部品が壊れたら、商社を呼んで、メーカーに発注してもらっていました。
しかし、今は、壊れた部品の型番をネットに入力すると、その場で購入できる環境が整っています。
未だ、このあたりの購買行動の変化に対応していない部品メーカーもありますが、そこを改善しただけで収益構造がガラッと変わった企業は1〜2例ではありません。
また、営業のやり易さというのは、「信用」という存在が大きく影響しています。
藤冨が指導している「波及営業」も「信用の強化」を武器に売上を伸ばしていきますが、この信用のあり方も大きく変わっていきます。
食べログや楽天のレビューに代表されるように、購入者の評価が、新しい買い手の創造に影響を与えるようになったのは皆さんも体感されていると思います。
これが、ブロックチェーンではさらに進化していきます。
食べログのやらせ問題は、ある特定組織の中央集権的な構造から生まれた問題です。
これが非中央集権になり、体験、購買評価が権力に左右されないとなれば、評価の信頼性が向上します。
結果、買い手はますます売り手の言葉よりも買い手の言葉を信用するようになるでしょう。
「商品そのもの」だけでなく、「商品の魅せ方・売り方」によっても、顧客の評価は変わります。
ブロックチェーンの浸透は、商品・営業戦略の根底を見直すキッカケを与えてくれるでしょう。
- 有能な働き手とのパートナーシップのあり方
私たちのような中高年は、これまでの時代と新しい時代の境目に鈍感になる傾向があります。
自己保存欲求として、環境変化に対して争い、保守的な姿勢を守り続けるからです。
しかし、若者は、昔の時代に生きていません。
今の、新しい芽に触れて、それを「当たり前」として生きています。
過去を古いと認識し、今の新芽を「これから」と捉えています。
有能な若者をリクルートしたいのであれば、自社の事業に「新芽」を息吹かせ、大きな森に育てるビジョンを打ち出すことが必要です。
ざくっとブロックチェーンが事業環境に与える概要をお伝えしましたが、御社は新しい時代にいかに対応した組織、戦略を構築するか…
既に考え始めていますか?