とことん「本質追求」コラム第506話 商品の差別化ができない場合の「差別化戦略」とは

 

 

「うちは、中古物件の売買をしている不動産会社です。商品の差別化ができない場合に、自社の優位性を発揮するためには、どうすれば良いのでしょうか?」

 

 

先週末に開催された「大手町ビジネス研究会」に参加された不動産会社の社長からのご相談です。

 

大手町ビジネス研究会→https://www.jcpo.jp/archives/category/sg_obsg

※次回 2月25日開催

 

同研究会は、先週からスタートした「様々な専門家に気軽な経営相談ができる定例会」で、日本コンサルティング推進機構が開催しています。

 

そこで、参加者の方から、冒頭の質問が出たのですが、その場では5分程度の時間がなく、端折った回答しか出せませんでした。

なので、この場で改めてお答えしようと思います。

 

業界を特定していますが、差別化戦略を考える上では、他の業界にも参考になります。ぜひ、このまま読み進めてください。

 

そもそも、自社の優位性がない状態で、営業活動をする場合「価値」に差が出ないわけですから、比較検討された際には「価格」で勝負するしかありません。

 

もちろん、比較検討されないための戦術やテクニックもあります。

しかし、現代のような高度情報化時代では、一歩間違うと「詐欺師」に捉えられかねない営業テクニック。

顧客第一主義を貫き永続企業を目指すことが本コラムの読者層だと信じていますので、ここではあえて触れない様にします。

 

となると価値で勝負できない場合は、意地でも「他の要素で差別化」を打ち出す必要があります。

 

冒頭の不動産業は、中古物件は、どの不動産会社が取り扱っても同一物件であれば同一価格だとのこと。

商品そのもの、価格ともに差別化ができない。

では、どうやって「他の要素で差別化」をはかり、自社の優位性を発揮するのか?

 

大きく分けて2つの要素で差別化を図ることが考えられます。

 

 

1つ目は、購買活動の利便性向上です。

同社は、すでに「無人不動産」を立ち上げており、内覧をオンライン化しているそうです。

購入希望者は、不動産会社の営業マンと同行せず、自分の好きな日時に物件を訪問。不動産会社は、それをリアルタイムでオンラインサポートして、利便性を上げる…というものでした。

 

非常に素晴らしい取り組みです。

さすが、エリアNO1の企業です。

 

ただ、もう一歩踏み込むことで、さらなる差別化を打ち出し、顧客を魅了することができます。

 

利便性を追求する! と脳みそを集中させていくと、リアルタイムでオンラインサポートをしている限り「時間的な制約」がまだ取っ払われていないことに気づかされます。

 

つまり、これを24時営業にしたら、さらに利便性は良くなります。

日中は忙しいビジネスマンは、夜に内見に行きたい…などのニーズがあります。

また、深夜の騒音が気になる方も、夜に内見したいはず。

 

時差を利用してアメリカにコールセンターを作る、またはそう言ったアウトソーシングサービスをやっている会社があれば、24時間コールセンターもコストを抑えてサービス展開できる可能性もあります。

 

また、さらに利便性を向上させるなら、VR(バーチャル・リアリティ)の導入も不動産の内見には非常に相性が良い。

VRゴーグルの認知率は90%に達していますが、「知っているし、使っている」という現在利用率は全体で5%程度。

計画、実施を早計に感じるかも知れませんが、そんなことはありません。

 

それこそ無人店舗にVRゴーグルを設置し、気になった物件を内見し、気に入ったらその場ですぐに仮予約できる様にすれば良いわけですから。

 

ちなみに、冒頭の不動産経営者は「契約のリードをSUU●Oやa●homeなどのポータルに依存している状況を改善したい」とのニーズもありました。

 

これも、VRと同時に改革することができます。

 

実は、私も今年の夏には引っ越しする予定で、ポータルサイトで物件を検索しています。

しかし、私の検索ニーズにあったポータルは皆無です。

 

大手ポータルサイトは、すべてのエリア、対象者の検索ニーズの吸い上げ、わかりやすいユーザーインターフェイスにするために、最大公約数を狙った検索画面を設計しています。

 

しかし、湘南に住んだら、リビングから海が見える、書斎から海が見える、などの個別ニーズが生まれてきます。

都会なら当然、そんなニーズは芽生えません。

さらに、所有している車が大きい場合、車庫が入るかどうかも気になります。

地方に住むなら、間違いなく「車の大きさや台数の検索ニーズ」が強まります。

さらにさらに、地方なら「駅からの徒歩」ではなく「バス停からの徒歩時間」を気にする人もいるかも知れません。

 

そんな土地柄固有の検索ニーズは、大手にはなかなか吸収できません。

 

VRゴーグルで内見できる無人店舗(有人でも構いませんが)、内見できる物件を検索する際の検索ニーズのクリエイティブを同時に行えば、その土地に住みたい人から支持が集まることは間違いありません。

 

利便性の追求は、土地視点・顧客視点に立てば、まだまだ創造できますでしょ。

 

2つ目の差別化の方向性は、パッケージ商品の作り込みです。

今売っている商品を一つの部品として捉え、消費者が関連購買する商品をワンストップで提供できる様にして差別化を図ることです。

 

出ていく家の後始末。契約にまつわる手続き、引越し先での手続き…様々な面倒があります。

 

例えば、水道、電気、ガスなどの解約と新規契約。

今は電力販売が自由化されていますから、業者からバックマージンを貰えば、お客様の代行してあげても、十分に元は取れます。

 

また、VR内見システムと「通販」を組み合わせれば、売買収益も生まれます。

オーダーカーテン、キッチンマット、絨毯やラグ、ダイニングテーブルの家具など、内装シミュレーションは、引越しする時の楽しみでもあります。

 

その楽しみをパッケージ化する。

 

煩雑な手続きから解放されたい…というネガティブ解消ニーズ。

より満足のいく引越しを実現したい…というポジティブ拡大ニーズ。

 

様々な要素をパッケージ化すれば、お客様から感謝されながら、差別的優位性が発揮でき、同時に収益拡大も狙えます。

 

以上のように、差別的優位性は、同一商品、同一価格であっても、顧客の立場に立って購買行動を見つめ直せば、まだまだクリエイティブできるはずです。

 

様々な人がいて、様々なニーズが存在しています。

どこにターゲットを絞って事業展開すれば、実現性、競争優位性、収益性が得られるのか。

見込客を集めやすく、普通の営業マンでも商談確率を上げられる戦略は何か?

 

顧客の視点から自社の事業を見つめ直すことで、新たな競争優位性、ビジョンが見えてきます。

 

御社も、顧客の立場から眺めて、自社の競争優位性、ビジョンを見出していますでしょうか?