「先日の”強みを引き出すヒアリング”は、参加者からとても好評でした。次はPRについても監修をお願いしたいです」
先日、経済産業省管轄の「高度な技術開発に成功し、国から認定を受けた企業」が展示会を開催するにあたり、来場者に理解しやすいように「強み」をブラッシュアップして欲しい…との依頼を受け、13社を1ヶ月足らずでヒアリング及び助言活動を実施しました。
工業系の企業ばかりで、日常生活では知り得ない技術や商品群が多いだけに、私自信がクライアント企業の事業そのものを理解するのも大変でしたが…無事13社終了。
後日、「全く初めての業界なのに、的確に強みを引き出してもらえて感謝します」と、お礼のメールが届き、私も嬉しくなりましたが…
同時に、「なぜ多くの企業が発信している“強み”は分かりにくいのか?」と不思議に思ったので、顧客を魅了する「強み」の打ち出し方を整理したいと考えました。
工業系企業は特に…ですが、「強み=他社ができない技術」と認識しているケースが散見されます。
確かに、そこが強みの根幹であることは間違いありません。
しかし、伝わらない表現は、透明人間と一緒です。
せっかく素晴らしい技術であっても、素通りされてしまったら、元も子もありません。
「売れる強み」にブラッシュアップさせるには、ターゲットが「なになに?」と覗き込んでくるような「表現」にすることがポイントになります。
ポイントは3つあります。
- 誰にとって、どんなメリットがあるのか?
- 時代が必要としているか?
- 使用場面は具体的にイメージできるか?
です。
それぞれ具体的に解説していきましょう。
- 誰にとって、どんなメリットがあるのか?
いわゆるターゲット選定と効用の明確化です。
新技術のため、具体的にどのような業界から支持されるか不明な場合もありますが、それでも諦めずに「想定ターゲット」を絞り出す努力をすることで、なにを持ってセールスポイントにするのか?が見えてきます。
例えば、光る織物。
光源を繊維の中に織り込む技術を持っている企業ですが、誰にとって、どんなメリットがあるのか? まったく想像もつかない状態でした。
技術的な特性や機能を聞いても、単に光る織物であって、それ以上でもそれ以下でもないと言うのです。
展示会に出ても、光る織物としかPRできない。
これではセールスポイントにも何もなっていません。
そこで、他の光るものをピックアップしてもらいました。
そして、その光るものを利用している業界、場面も同時にピックアップ。
すると、1㎡あたり1kwで発光させることができること。
そして、様々な色彩の光源があることなど、の特徴が次々と開発者の口から飛び出してきました。
特徴は何ですか?と聞いても、開発者(売り手)から見れば、当たり前すぎて表現できなくても、比較対象が出ると特徴が浮き彫りになることがあります。
- 時代が必要としているか?
社会にイノベーションを起こすような技術や新商品によって、生活者や企業人の思考や行動、習慣などが変わっていきます。
また、今回のコロナのような社会現象、震災や異常気象などのような自然現象によっても人々の思考や行動、習慣も変わります。
言い換えると、その時代、時代によって、消費者の思考・行動・習慣が異なると言うことです。
この時、時代の変化に適合できない技術や商品は、自然消滅する運命を辿ります。
人間にも寿命があるように、商品にも寿命があります。
時代に必要とされる商品であるか…
あくまでも「買い手の立場」から俯瞰し、商品のあり方・見せ方を変えていく必要があるのです。
また、受け入れられるメッセージも時代によって変化します。
例えば、今の時代には「根性、努力」は、受け入れられません。
聞いた話によると、スパルタ教育によって根性を鍛える「巨人の星」は放送禁止になっているとか。
私たち人間は、接する情報によって、思考や行動、習慣まで変化してしまいます。
今、時代がどのような情報を私たち生活者に与えているのか…。
ストレートに情報を受け止めずに俯瞰して社会を見渡すことで、消費者の思考・行動・習慣の変化を感じとることができるようになります。
自社商品を取り巻く環境はどのような時代変化の影響を受けているのか?
この考察が「お客様を魅了する自社の強みの打ち出し」につながっていく可能性を見捨ててはなりません。
時代を制するものは市場を制します。
- 使用場面は具体的にイメージできるか?
お客様は商品を購入しているのではない。
商品コンセプトを購入しているのだ。
マーケティングの基本中の基本となる考え方です。
この商品コンセプトを構成する中心軸は、「ターゲット」「購入メリット」「場面」の3要素になります。
これが競合よりも優れているか否か、これが「売りやすさ」に繋がっていきます。
優秀なセールスマンは、必ずと言って良いほど販売商品の利用する「場面」を明確に伝えています。
他のお客様の事例などを織り込みながら、話にリアリティを加えていきます。
売れる営業マンは、様々なお客様の生の声をストックしていますから、新規営業先で、どの引き出しから「利用シーン(場面)」を事例として伝えれば、相手が魅力を感じてくれるかを瞬間的に見極めています。
テレビ通販の雄である「高田明さん」も利用シーンとメリットを同時に伝えることで、他愛もない商品を爆発的に売ってきました。
ボイスレコーダーを販売する手法がとても秀逸だったのでご紹介しましょう。
ボイスレコーダーの主な利用シーンはどんな場面でしょうか?
一般的に思いつくのは、新聞や雑誌などの記者の「取材現場」、ビジネス会議の記録など「仕事の現場」をイメージすると思います。
しかし、高田さんは、主婦に向けて「子供が帰宅した時の伝言メッセージ用」に場面をイメージして売り込みました。
「今日は、18時に帰るね」「おやつはケーキが冷蔵庫に入っているよ」と、学校から帰ってきた子供たちに伝える場面をテレビに映し出す。
子供はお母さんの声を聞いて安心して、親子の絆が日々築かれていく…。というメリットをイメージさせたのです。
すると、その番組にボイスレコーダーの注文が数千台も入ったのです。
ターゲット、顧客メリット、場面は三位一体です。
場面の明確化は、ターゲットにとってのメリットにリアリティを加えていきます。
このように「売れるセールストーク」に昇華させてこそ、お客様のハートを鷲掴みにすることができます。
「強み」とは、自社の自慢を表現することではありません。
「強み」とは、誰にとってどんな貢献ができるのか?」を表現することなのです。
売れるセールストークをまずは明確化し、それを土台にして「強み」を表現すれば、自然とお客様を魅了することができます。
御社は、自社の強みを顧客目線で伝えられていますか?