「御社は何を売っているのでしょうか?」
このような質問をすると多くの方は「商品レベル」で販売しているものを教えてくれます。
「食器を売っています」
「レジスタを売っています」
「省エネ機器を売っています」
たしかに販売しているものは「商品」かも知れません。
しかし、この発想だと競争まみれの市場では、体力勝負の営業活動に頼らざるを得ません。
これでは、戦略的な活動からは、ほど遠くなってしまいます。
そもそも戦略とは、「戦わずして勝つ」環境を整えることです。
それには、まず今置かれている環境を構造的に掌握することが肝心です。
多くの商品は、今「成熟市場」に位置づけられています。
成熟市場の購買行動は「周りの人の行動や常識に引きずられている」ことが特徴です。
周りの人に影響され、何気なく興味を抱いたものを、何気なく購入しているのです。
従って、『お客さんは、その商品を通じて本来なにを求めているのか…』
ここを深く、深く熟考することが、商品販売戦略を作り込む上での「原点」になるのです。
以前、私が営業マンの現役時代に、こんな経験をしました。
扱っていた商品は、外食チェーン向けの「売上分析システム」。
レジスタからデータを収集して「日報」や「ABC分析」などの分析資料を出力するサービスです。
ある程度のチェーンになれば、全店舗の売上を翌日までには集計したい…というニーズ(要求)は、存在します。
だから、システム化の必要性が出てくるのですが…
その程度であれば、どの業者と付き合っても同じだと買い手は認識します。
そうなると価格勝負になるのは火を見るより明らかです。
なので、私は、世の中の常識は“まぼろし”だと断言し、<ケンカ商法>に打ってでました。
「売上分析システム」の導入目的はなんでしょうか?
現場(店舗)の状況を数字で掌握して、次なる「策(仮説)」を考え、その策が経営にインパクトをもたらしたかどうかを「検証」するためのものであるハズです。
POSの先駆者であるセブンイレブンは、まさにその「仮説—検証ツール」として経営の重点政策に位置づけています。
しかし、外食ではどうでしょう。
ABC分析を見て、次なる一手を考えるような運用体制になっているのでしょうか? 単なる集計装置ならもっと安価でよいはずです。
分析システムは、現場と戦略を企てるための「道具」であるべきです。
例えば、ランチの単価をあげよう!と方針を立てます。
そこでプライスライン分析に着目して、50円、80円、100円の副菜を用意して、どんなメニューのどのプライスラインであれば、サラリーマンがオーダーしやすのか…
結果、客単価はどのように推移していくのか?
このように「仮説—検証ツール」として効果的に使うべきではないでしょう?
と、他社にはないサービスを前面に打ち出しながら、今までの常識に対してケンカを売るようなプレゼンテーションを繰り返していきました。
すると、商談先の役員さんは「相談するならココしかないだろう…」と評価をしてくれ、担当者は「この会社と付き合えば、自分の能力があがるかも!」と期待し、価格勝負に陥る事無く商談が成立していったのです。
「売上分析システム」や「POSシステム」を売っていては、価格勝負にならざるを得ません。
しかし、「経営にインパクトをもたらす“作戦屋”」と位置づけて販売すれば、競合他社が一気にいなくなります。
どの盲点を突けば「戦わずして勝つ」環境がつくれるか…。
そもそも我が社は、顧客から見たときに何屋さんだと認識されるのか?
さらには、成熟市場を打破するためには、どのような常識にケンカを売るのか…。
こういう原点を考える事が「強い販売戦略」を築きあげるのです。