『私は、自分が理解出来ない事はやらないのです』
ウェブサイトへの集中投資を拒む社長判断に危機感さえ覚えていた、とあるクライアントさんとの出来事です。
それまで飛び込みやテレアポといった伝統的なプッシュ戦略で、圧倒的な業績をあげてきただけに、今でもその営業スタイルを踏襲した販売戦略を展開しています。
部下の管理も営業マンが対象であれば「あの手この手」が繰り出せますが、未知なる分野(ウェブサイト)では、社長自らがどのような役割をすればよいのか…皆目検討もつかないのでしょう。
・自分の役割がなくなってしまうかも知れない。
・部下に好き勝手にされてしまうかも知れない。
・自分の得意とする営業の役割が軽視されると社長自らの存在意義が無くなってしまうかも知れない。
過去の成功体験を捨てろ!と口では簡単に言いますが、自己重要感が損なわれる可能性の高い判断は、なかなか出来るものではありません。
頭ではわかっているものの、何か嫌な予感がする…。
そんな感覚に陥るのは、なんら不思議ではないのです。
だからといって、大きな時代の流れには逆らう事が出来ないのも現実です。
世の中の揺るぎない法則のひとつで、「ある質量を持って動き出したら、その質量の何倍ものチカラで遮らない限り止まることはない…」という【慣性の法則】というものがあります。(京都大学名誉教授の「本質を見抜く考え方」より)
ネットの社会は、確実に市民権を得ています。
そして、購買心理や購買行動に大きな影響力を与え続けています。
慣性の法則から考えるまでもありませんが、この動きは加速こそするものの止まることはありません。
つまり、この構造を無視して今後の営業戦略は立てることはできないのです。
そんななか、同社のトップセールスマン達が辞めはじめ、業績に陰りが出てきました。
新人で補充するものの、伝統的なセールス手法に馴染めず、四苦八苦しています。
小手先の技でつなぎ合わせて来てはいるものの、月日を追うごとに営業マンの士気がさがり、業績も下がってきてしまいました。
抜本的な方向転換は、私も幹部の人たちも何度も提案しましたが、ウェブサイトの「ウ」の字が出ただけで拒否反応。
何とか聞く耳を持ってもらおうと色んな確度から切り出している中…
ようやく社長の方から「ウェブサイトへの集中投資の件なんだけど…」と切り出してきてくれたのです。
すぐさま「インターネット戦略」の具体的アプローチを説明しました。
インターネットの世界では「需要」と「供給」が、あからさまの掌握できます。
商売は「需要」と「供給」のバランスで成り立っていますから、この情報収集は、ある意味「商売の成功・不成功」をかなりの精度で掌握できることになります。
自社の商品に顧客がリーチしてくる際、どんなキーワードで検索するだろうか…と想定しながら、Googleのキーワードプランナーで月間検索数を把握し、「イケる」と直感したキーワードで実際に検索してみれば『競合企業の手の内』まで、ある程度は理解することができます。
これを実際の画面を見ながら話していると社長の顔つきが見る見る変わってきました。
「これを任せるとしたら、誰が適任だと思いますか?」と…。
これは好機!と、新しい人材配置、各営業マンの役割まで提言し、即断即決で新しい戦略の方向性が固まりました。
商売の世界で「確実に…」と断言できることは多くはありませんが…
このアプローチだけに限っては、「イケる」と直感したものは、ほぼ確実に成功します。
なぜなら「需要」がわかり、「供給」企業の戦略も手に取るようにわかるためです。
まさに、我を知り、己を知れば百戦危うからずの世界です。
ウェブサイトを軸に「プル戦略」を展開していきながら、地べたを這う「プッシュ戦略」を組み合わせれば、鬼に金棒です。
空爆をしてから、地上部隊を突入させて制圧するのか…
それとも、いきなり地上部隊を突入させるのか…。
現場の士気がどれほど変わるか、言うまでもありません。
売上が拡大する要素は「兵力」「武器」「士気」「情報」「策」で決まります。
この中で、実力以上に結果に大きく影響するのは「士気」です。
売上を上げるためには、顧客心理を読む事も大切ですが、同時に営業マンの心理にも気を配ることが大切なのです。
会社が強力な支援をしてくれる…と信じた営業マンは、それに報いようとするものですから。