とことん「本質追求」コラム第97話 顧客ニーズに惑わされるな!

既存事業のテコ入れをして、新たな成長軌道を描きたい…。

あらゆる業界が成熟化するなか、多くの企業が直面している課題です。 
実際、私自身もクライアント企業さんから依頼されて「既存事業のテコ入れ」をすることもあります。

プロジェクトを立ち上げ、これまでの取り組みを整理していると、色々な<策>を実践してきたものの、業績が思うように伸びない… 
それこそ、原因と解決策は三者三様なのですが…「うまくいかない共通項」も存在しています。

この「うまくいかない共通項」というのは、原理原則に該当します。

100%成功する<策>というのは、ありません。 
しかし、原理原則を抑えなければ、99%失敗するのも事実です。

ユニクロの柳井社長も「野菜ビジネスに参入したのは、原理原則から見ると過ちだった…」と話しているほどです。 
どれだけ優秀な経営者でも、原理原則を外した経営判断で成功することはあり得ません。

その原理原則の一つとして、今回取り上げるのが「顧客ニーズに惑わされるな!」… 
つまり「顧客と自社の関係性についての本質」を追求することの重要性をお伝えしていきます。

 

  • コンペでA社はこんな提案をしてきているから我が社も対応せねば。 
  • お客様からこんな事を言われたから、早速対応せねば。

 

よくありがちな検討事項や現場判断…。

小さなことであっても、それが積み重なっていくと、企業体質になる恐れがあります。

目の前の「売上」に翻弄され、本質的な視点を見失っている事業活動では、特定の営業マンの数字はあがったとしても、会社としての成長を実感できる体制にもっていくことは出来ません。

拙著「営業を設計する技術」でもお伝えしたとおり、ニーズとは「要求」です。

顧客の要求をさらに上回る提案力があれば、良いのですが…

それが出来ずに、要求にただ対応するだけでは、お客様の奴隷と化すリスクが増大してしまいます。 

奴隷とまではいかないまでも「業者扱い」されるのは、構造的に見て不思議ではありません。

「業者扱い」から「パートナー」としてみられ、顧客をリードするような「顔つき」を創っていかなければ、成熟社会のなかで抜きん出ることは出来ないのです。 

では、どのようにすれば「パートナー」として見られる「顔つき」が創れるのか? 
その第一歩は、顧客が商品を購入する「目的」を掌握する必要があります。 
効果的な質問は、本質をあぶりだします。

  • 顧客は自社商品を使ってどんな目的を達成しようとしているのか? 
  • その目的を達成することで、どのような欲求が満たされるのか? 
  • 自社商品以外に、その目的を達成する代替案は? 
  • その代替案と比較して、自社の優位性と劣性は? 
  • 代替案に打ち勝つためには、どのような「顔つき」であるべきか。

 このように消費者の視点にたって、戦略を設計して行くことで、既存事業の底入れ策に有効かつ具体的な<策>が生まれてくるのです。

ところが顧客の本質的な購買心理に目を向けず、過去の経験上で企画を発想して「現状から中々脱却できない」ケースが後を絶ちません。

セブンイレブン・ジャパンの創始者である鈴木敏文氏も、こう言っています。 
「人間は厳しい状況になればなるほど、そして、何とかしようと懸命になればなるほど余裕がなくなり無意識に過去の成功事例でものを考えてしまう。しかし、経験的に“イイ”と思われることはみんながやるから、結局競合になってしまい、ますます厳しい状況になる…」と。

 

そう、現状から脱却を図るためには、過去の延長線上でモノゴトを考えてはならず、純粋に消費者視点で発想することが大事です。

新しいアイディアや企画が「自社で出来るのか…」と社内の都合で判断をするのではなく、顧客にとって魅力的な顔つきをしているのか…これを追求する姿勢が大切なのです。 

今の時代は、顧客が商品を購入する“目的”を果たす代替案がうじゃうじゃとあります。

例えば、「高い機能性をもった掃除機」と「ハウスクリーニグ」も、顧客の目的達成という視点から見れば、競合関係にあります。

ある掃除機の敵は、他の掃除機だけではなくなっているのです。

成熟期では、顧客の視点から見た「競争環境」をどれだけ的確に見抜けるか…が、戦略を発想する上でのとても重要な視点となります。 

  • 我が社の商品は、顧客のどのような目的を達成しているのか。 
  • その目的を達成する代替案(商品やサービス)の存在は、どのようなものがあるのか…。

 

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