とことん「本質追求」コラム第485話 営業マンが新規営業をやりたくなる仕掛けづくりとは

 

「先週のコラムはめちゃ共感しましたよ。ウチはお陰様でコロナ禍でも2期連続で120%超えを達成しています。」

 

先週、元クライアント企業の社長から久しぶりにメールが届きました。

懐かしくなって、電話で話すことになったのですが…

同社からのコンサルティングの依頼を受けた時のシーンを昨日のことのように思い出しました。

 

「営業マンの能力を最大限に引き出したいのです。そのためには、当社のこと、そして商品のことを心底惚れて欲しいのです。私からも切り口を変えて何度も話をしていますが、客観的な視点を入れて、もっともっと惚れて欲しいんですよ。そしたら、自然と売れますでしょ? 藤冨先生のセミナーを聞いて、先生ならそれが出来る!と感じたんです。お手伝いしてくれませんか?」と。

 

その依頼を受けたとき、このプロジェクトは100%成功すると確信を持ちました。

 

なぜなら、組織的に商品が売れ続ける「ツボ」を的確に捉えていたからです。

 

同社社長は、もともと営業畑出身で起業された方。

創業当時は、自らが販売をしていましたが、自分がバリバリ売っちゃうと下が育たない…と思い、第一線から退き社長業に専念。

ご自身の経験から、「私は売っている商品を誰よりも愛していたから、誰よりも売れたんですよ」と言っていました。

 

本当にその通りです。

 

自社商品を喜んで買ってくれそうな見込客を見つけること

自社商品の魅力に気付いてもらうにはどうすれば良いのか、考え、実践すること

営業各人が「使ってもらえれば、うちの良さが必ず分かる!」と自信を持ってクロージングできること

 

すべて自社商品の魅力を熟知し、お客さんになりうる人(法人)に満足してもらえる自信があるからこそ、強い営業ができるようになるのです。

平たく言えば、自社商品とお客様を愛することが「売れるツボ」と言えるでしょう。

 

先週のコラムでは、営業マンが新規営業をやらない理由の一つとして、「毎回・毎回同じような顧客フォローに翻弄されている」を挙げました。

他にも「営業マンが新規営業をやらない理由」は、ありますが、逆説的に言えば、「新規営業をやりたくなるケース」を分析すれば、「やらない理由」を自然と排除することができるのではないでしょうか?

 

少なくとも、冒頭に登場した会社は社長自らが「新規営業をやりたくなる環境整備」に力を注いだ結果、コロナによって業績悪化に苦しむ競合他社を尻目に躍進し続けています。

 

新規営業がやりたくなる環境整備は、主に3つのポイントを抑える必要があります。

 

  • 愛社精神を持ってもらうための環境整備
  • 自社商品が好きになるような環境整備
  • 勝負に勝てる!と思いこめる環境整備

 

 

です。

 

掘り下げて、解説しましょう。

 

  • 愛社精神を持ってもらうための環境整備

 

「愛社精神」というと死語になりつつありますが…

「誇りを持てる組織の一員である」と社員が認識すれば、自然と会社への求心力は高まっていきます。

会社への求心力が高まれば、個人が組織に貢献しようと考えだし、士気が高まり、個人の潜在能力も最大限に引き上げることが出来ます。

 

 心理学者のマズロー は、著書「完全なる経営」の中で、鋭い指摘を残しています。

 

「何か重要なものの一員になる。これが自尊心を回復させる特効薬だ」

「価値ある大義や重要な仕事と一体化し、それらを自己の内部に取り込むことによって、自己を増大させ、その価値を高める」

「重要な仕事を成し遂げる構成員になれば、知能、才能、技能が不足していても、それを補うことができる。この体制が、創造的でない人間を創造的に、知的でない人間を知的に、矮小な人間を偉大に、有限な人間を永遠で広大無辺な存在に変える」と。

 

つまり、「誇りを持てる仕事をしている集団に属している」という確信が、組織的な営業推進力の源になっていることに気づかなければなりません。

 

営業マンに努力をしろ! という前に、経営者や経営幹部は「愛社精神を育む環境整備に力を注げているか」を自問する必要があります。

 

 

  • 自社商品が好きになるような環境整備

 

 特に今の若い営業マンは、社会に対して非貢献的な活動をすることに嫌悪感を抱くタイプが多くなってきています。

 販売=自社の利益=自分の利益(収入) という構図は、高度成長期には通用した方程式ですが、それは過去の話。

 今の時代、今の営業マンは、 他者への貢献=会社の利益=自分の利益 という方程式が成り立ったときに、モチベーションが向上してきます。

 ここでいう「自分の利益」は、収入だけには限定されません。

 やりがい、達成感、喜びの共有(共感)など、非金銭的なものを「利益」として受け取っています。

 自分自身が売る商品は、お客様のためになっている! 実感できたときに初めて自社商品を好きになってくれるのです。

 

 ・誰のための何のための商品なのか

 ・唯一無二の価値を提供できているのか

 ・同等の価値を提供する商品がある場合、他の魅力条件を提供できるのか

 

 など、自社商品の絶対的な魅力を的確に捉えることで、自ら販売する商品を心底愛することができるようになります。

 そのための意識浸透をどう実現するか。

 そこを突き詰める必要があります。 

 

  • 勝負に勝てる!と思いこめる環境整備

  

   いくら「大義」があっても「勝てる確信」がなければ、尻込みしてしまうもの。

 明治維新の志士や、第二次世界大戦中の特攻隊兵士から見れば、「ふぬけるな!」と喝を入れられそうですが、時代が変われば、人間のタイプも変わります。

 藤冨が「波及営業」を提唱するのも、営業マンに「勝てる武器」を渡せば、士気が自然と上がることを経験上把握しているためでもあります。

 

 織田信長は、戦に出動する兵の大半が百姓や農民だった時代に、楽市楽座でもうけた軍資金をもとに、専業の兵士を雇い日々、武器の使い方の訓練などを行なっていました。

 発砲までに数分かかる火縄銃のデメリットを克服するために、鉄砲隊を3段に分け、最前列が射撃している間に次列が点火、最後列が弾を込めるという「三段撃ち」を考案し、徹底的に訓練させていました。

 当時の兵士たちの気持ちを想像してみてください。

 強力な武器を与えられ、その使い方を訓練され、どこの兵士よりも優れているかも?! と感じられたら…

 士気が上がらないはずがありません。

 

 経営者や経営幹部は、部下が「やれる!」という士気が湧き起こるような環境を作り出すことに注力をすることが大事。

 

 

  • 愛社精神を持ってもらうための環境整備 
  • 自社商品が好きになるような環境整備
  • 勝負に勝てる!と思いこめる環境整備

 

この三要素の売れる環境整備が整っていれば、百戦危うからず…です。

 

御社は、売れる環境整備に着眼し、全神経を行き届かせていますでしょうか?