とことん「本質追求」コラム第96話 営業マンの行動管理における限界

「買う側の心理を読む事も大切ですが、売る側の心理を動かすことも大事ですね…」

普段は社長さんとサシで飲むことが多いのですが、ときどき営業部隊のメンバーから誘われて飲みに繰り出すことがあります。

プロジェクトの序盤を終え「我が社として何をなすべきか!」が明確に定まったあとは、みな士気が高まります。

だいたい、そのタイミングで誘われます。

戦略が明確になり、勝てる予感がしてきて…ウズウズするような感覚。 
何時、何を、どうやるべきか…。 
その具体的な行動までイメージできてくると、誰でも興奮するものです。

そんな社員を見ると、社長は、決まって話し出します。

売る側(営業マン)の心理の重要性を…。

 

ここ数年、とても目障りな主張をしているコンサルタント達が多いのが目についていました。

営業マンを、あたかも道具のように扱い、奴隷のように管理する数々の仕組み。

バックエンドで「営業支援システム」でも販売しているのでしょうか。

営業マンの行動管理を厳格化すれば売上はあがります!と主張しているこの人達は、一体どこを見て仕事をしているのか…考えれば考えるほど、憤りを感じます。

そもそも、コンサルタントが、バックエンドを担いで商売をしている発想自体が気に入りません。 

本質論を突き詰めようとしない専門職のプロは、クライアントが本来進むべき道を見誤りますから、市場から退場すべきです。

クライアントさんは真剣に悩み、組織を守り成長させようと、それこそ血がにじむような努力をしています。

将来の資金計画を考えると、夜も眠れないほど神経をすり減らしている社長さんもいます。

どのタイミングでどのような投資をすれば、成長できるか…先行き不透明な道なき道を歩む社長さんもいます。

 

そこに、企業として解決しなくてはならない本質的な課題にフタをすれば、従業員を含む多くの人たちに迷惑をかけてしまいます。

もちろん、営業マンの行動管理を全否定しているわけではありません。

確かに行動量を増加させれば、売上があがることもあるでしょう。
しかし、それは局所的、一時的な現象である
という事実をしっかりと認識する必要があります。

 

行動量を増加させて持続的に成果が出るのは、潜在能力が元々高かったセンスのある営業マンだけです。

厳格化した営業マンの行動管理によって、試行錯誤を強要したから、成果がでたのではありません。 
センスのある人が、思考錯誤したから、仮説が当たり、成果に繋がっているのです。 

カンフル剤と割り切って取り組むのなら、ともかく… 
こんな<局所的な現象>に事業の成果を求めて、組織として取り組むのは頂けません。

たいへん不遜な言い方ですが、センスのない営業マンに、いくら努力をさせても無駄だからです。

日本マクドナルド創始者である藤田田氏や、今は干されてしまっていますが…実力派芸能人として著名な島田紳介氏も「センス(才能や能力)×努力」で仕事の成果は決まる…と言っています。

そして、身もフタもない話ですが、センスは生まれ持ったものだと定義しています。 
私もたくさんの営業マンを見てきて、その通りだと思います。

これが、揺るぎない真実だとしましょう。

とすると、成果を出す為には「センス」と「努力」に関係する要素(変数)に着目しなければ、なりません。

厳格化した行動管理で「努力」を強いるのは、「目の前のニンジン」が機能していることが前提です。 
ニンジンで走らなくなった現代人に行動管理を主軸として「努力」させるには「尻をたたく」など、恐怖感を与えるしかありません。

営業研修で恐怖感を与えれば、数ヶ月間は「努力」をするでしょう。 
でも、時が経ち、尻を叩かなくなったら、確実に「努力」しなくなります。 
成果があがるのは、あくまでも<一時的な現象>なのです。

「努力」をし続けるのも、ひとつの才能(持って産まれた資質)ですから、ここに焦点をあわせて<変数>を弄るのは、研修会社だけが儲かる構造なのです。

 

では、残った「センス」をどう見るのか…。 
生まれ持ったものは、変化させようがない…。

だからこそ、個人のセンスにあまり期待せずとも成果がでるよう「商品のポジショニング」を弄ったり、前回のコラムでお伝えした「あの会社から買いたい…と思われる事業の定義」を作り込み、組織全体で「売れる空気」を作っていくことが、有効策となるのです。

そう…売る側の心理をも計算にいれて戦略をつくる事が、これからの経営においては必要不可欠となるのです。

 

注意※

センスと一言で言っても、営業センスだけでは語れないのが今の時代の特徴です。 
成熟した時代では、競争環境が複雑化しているので、競争の構造を見抜くこともセンスなのです。 
従って、今までの仕事では成果を出しセンス溢れる人材であっても、時代が変われば、求められるセンスも変わってくるのです。