「鉄道会社 vs タイムズ(駐車場・カーシェア)」とは、面白い視点ですね。
先週の10月28日、当社セミナーを実施した際、真の競争相手を見つけることで、自社が狙うべき市場を明確化することが出来る…というお話をさせて頂きました。
アンケートを見ると、前述の鉄道vsタイムズの空想話が面白かった…と書いてあり、こんな感想を添えて頂きました。
「自社の強みを改めて見つめ直す良いキッカケになりました。商品開発と連携して10年後の危機を乗り越える準備をしたいと思います」と。
意外にも自社の「強み」を発見するのは難しいものですし、ましてや3年度、5年後、10年後、自社の強みが持続化させるのは、至難の業です。
これまで、町の美味しいレストランは、隣町のレストランと勝負していれば、強みをブラッシュアップすることが出来ていました。
しかし、今ではデパ地下の高級総菜と戦っていたり、名店のケータリングサービスとも戦っている時代です。
外食を気軽なレジャーと捉えれば、「ディズニーランド」や「USJ」などのレジャー施設と戦っているかも知れませんし、限られたお小遣いのシェア争いと捉えれば、携帯の通話料金やゲーム代と戦っているとも捉えられます。
美容市場では、サプリメントメーカーは、スポーツジムやヨガなどの運営会社、美容室、もしかしたらホワイトニングを手掛ける歯医者さんと競合しているかも知れません。
法人ユースでいけば、コピー機vs格安印刷会社も競合していますし、人材派遣会社は、クラウドソーシング企業と競合しているとも捉える事が出来ます。
このように、同業種や同じ業界のプレイヤー(生産者)だけが競合なのではなく、異業種との売上獲得競争をしているのが、現実です。
このような視点を思考回路の中心軸に置いておくと、様々な企業行動から彼らの打ち手が透けてみえ、将来の競争の構図がぼんやり見えてくることがあります。
冒頭の「鉄道会社vsタイムズ社」は、藤冨の完全なる妄想ですが、それでも充分にあり得る未来だとドキドキ・ワクワクしています。
というのも、入手もとはわからないのですが、自宅のテーブルに「あるチラシ」が目に飛び込んできた時に衝撃が走ったのです。
タイムズ― 車の予約 最短1分。 スマホアプリから「近くにあるカーシェア」のマップが見られる。 そんなチラシです。
裏面には、東京の路線図がありタイムズのカーシェアがある駅がプロットされています。
つまり、貴方の住んでいる駅にも、会社の近所にも、通っているカルチャースクールの駅にもありますよ。というメッセージ。
そう言えば、自宅の周りに、これでもか!というほどタイムズの駐車場が出来ているのが、とても気になっていました。
ある駐車場は、いつ見ても20〜30%の稼働率。
明らかに供給過剰なのに、また新しく近隣に駐車場が作っているのです。
過剰投資にも見えるこの企業行動(営業活動)…どうも何かの伏線を張っているような気がしてなりません。
別な確度から世の中を眺めてみましょう。
グーグルマップで日本中の地図をデータベース化しているGoogleが自動運転者の先頭を走っている…というニュースは皆さんもご存知だと思います。
地図データベース+広告主+自動運転車とくれば、車内がメディアとなり、TV広告や雑誌広告などとは比較にならないほど、広告効果のたかい「媒体」が完成されます。
検索エンジン+広告だけで、世界の時価総額ランキング2位まで上り詰めたGoogle社が、このような美味しい市場に本気にならない訳がありません。
それに…時価総額ランキング1位のAppleが、2015年2月に自動運転車の開発に着手したのを見ると、これから熾烈な争いが起きるのは、間違いない現実です。
しかし、GoogleもAppleも「電車」は作っても「駅」は作っていません。
駅…?
ありました。
これが「駅」です。
Google(又はApple)とタイムズの事業提携。
もしも、これが新聞発表されたら、世の中に与えるインパクトは甚大です。
まだまだ、自動運転車には、「ハッキング対策」などの課題は残っています。
ハッキング対策とは、自動運転車を乗っ取られ、ブレーキやハンドルを操縦不能にする悪意ある犯罪者から身を守る技術です。
これも、各部品間を暗号化する技術など、次から次へと新技術がタケノコのように出てきていますから、時間の問題だとは思いますが…
大切なことは、このような新しい世の中の動きが、自社の市場にどうインパクトを与えるか…という創造力を鍛えることが大切なのです。
- 自動車メーカーに与える影響
- 広告代理店に与える影響
- 交通標識の製造会社に与える影響
- 鉄道やタクシーなどの交通系企業に与える影響
- 物流系企業に与える影響
などなど、新しい技術をもったアウトサイダーが、既存事業者の「強み」を希薄化、無力化するときに、消費者の心理はどう動くだろうか…
この感覚を研ぎ澄ませる事が、「自社の強みを持続化させる」上で、とても大切な思考ポイントになります。
なぜでしょうか?
それは少し思考を深めれば、その重要性をより理解できると思います。
と言うのも、欲求というのは自然と喚起されて、「あれが欲しい、これが欲しい」と消費者(企業も含みます)が言い出す訳ではありません。
生産者が、「こんな商品があったら便利だろう」と、消費者が満たされていないシーンに思いを馳せて、商品を企画開発し、宣伝や営業活動をすることで、消費者の欲求が芽生えはじめるのです。
この現実を直視すると…
将来の消費者の欲求なりニーズを摑むには、競争相手の打ち手を想像する必要性があることが、わかります。
つまり、市場参入者の打ち手を睨みながら、どう消費者心理が動くのか…、その時に当社の強みを、どのように「価値」に転換していけば、生き残り、成長し続けられるのか…。
ここに営業の接点を合わせていくことが、会社の強みを磨き続け、営業効率を高めていく最大限のポイントになります。
仮にこの思考と努力を怠れば…
自社の強みに賞味期限が訪れ、チカラを削ぎ落とされてしまうことになるでしょう。
自動車業界に限らず、あらゆる業界で競争の垣根は崩れています。
見て見ぬ振りをすれば、命取りになる可能性もあります。
真の競争相手は誰なのか?
競争相手が新しいルールを作って、営業攻勢をかけたときに、どう消費者心理は動くのか?
どの市場に市場を絞ってきけば、それがクリアに見えてくるのか?
その視点が大切になってきます。
御社の真の競争相手は、誰でしょうか?
コラムをシェアして頂きまして有り難うございます!
これからも宜しくお願い致します。
藤冨 雅則